くらし 《特集》私は私らしく、認知症と歩む(1)

■その人らしさは、きっと続いていく
鈴木すまさん 102歳

認知症対応型グループホームのヤザキケアセンター紙ふうせんに入所する、鈴木すまさん。
7月2日(水)、すまさんはヤザキケアセンター紙ふうせんの職員と一緒に、コメダ珈琲店裾野店(以下、コメダ珈琲店)を訪れました。この日の注文は、エビフライ。エビフライは、すまさんが大好きな食べ物です。認知症になる前、すまさんは息子夫婦と一緒にコメダ珈琲店を訪れていたことから、馴染みのお店で大好きなエビフライが食べられることをとても楽しみにしています。店員の天野由美子さんは、すまさんが認知症になる前からすまさんのことを知っています。
「すまさん、いつも息子さんと来てくれてましたね」「あら、私のこと知ってるの?小さい頃から?」「コメダに来てくれるようになってからですよ(笑)」すまさんの周りは笑顔と笑い声に包まれました。
認知症になっても、自分のやりたいことを続けられる。そんな社会が広がってきています。

◆認知症になっても変わらないこと
○コメダ珈琲店の天野さん
鈴木すまさんが、初めてコメダ珈琲店を訪れたのは12年ほど前。市内にコメダ珈琲店がオープンした日の翌日、すまさんの息子の鈴木好一さんに誘われて来店しました。離れて暮らす好一さんが帰省したときは必ず、すまさんと好一さんはコメダ珈琲店のモーニングを食べに行っていました。2人は明るい笑顔で接客をしていた店員の天野さんと親しい間柄になっていきました。

○進む認知症と在宅介護の限界
「母は少しずつ物忘れが増えていって、気づいたら認知症になっていた感じです。95歳の頃には、ひとり暮らしが難しくなりました。買い物に行って、買ったものを冷蔵庫にしまえずに和室に置きっぱなしにして腐らせるようになり、帰省すると家の外まで異臭がするくらい。これはまずいと月に何度も帰省しましたが、さすがに続けるのは限界だなって思うようになりました」と好一さんは当時を振り返ります。

○認知症になっても自分らしく
7年前、すまさんはヤザキケアセンター紙ふうせんに入所しました。コメダ珈琲店に行きたいというすまさんの希望をかなえるため、施設の職員と一緒にすまさんはコメダ珈琲店を訪れました。
「認知症になっても、施設に入っても、母は自分のやりたいことをちゃんと言っているみたい。それをかなえてもらえて、施設に入る前と変わらず地域とつながっていられるのはありがたいよね。母はいつもみんなに『ありがとう、ありがとう』って言っているよ。認知症の良い面は、忘れられること。みんな生きていると辛いことや悲しいことが沢山ある。その悲しみから解放され、忘れられることは幸せの一つだと思う」変わりゆく日々の中でも、母が母らしくいられる幸せ—。好一さんは何度も、言葉に感謝を込めていました。

■「認知症とともに生きる希望宣言」
(一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループ)
1 自分自身がとらわれている常識の殻を破り、前を向いて生きていきます。
2 自分の力を活かして、大切にしたい暮らしを続け、社会の一員として、楽しみながらチャレンジしていきます。
3 私たち本人同士が、出会い、つながり、生きる力をわき立たせ、元気に暮らしていきます。
4 自分の思いや希望を伝えながら、味方になってくれる人たちを、身近なまちで見つけ、一緒に歩んでいきます。
5 認知症とともに生きている体験や工夫を活かし、暮らしやすいわがまちを、一緒につくっていきます。