くらし YOU and IZUNOKUNI(あなたと伊豆の国) 第31回

鴨下(かもした)友秀(ともひで)さん
伊豆長岡温泉鵺(ぬえ)ばらい祭実行委員長

■伊豆長岡温泉の歴史は終わらない
頭は猿、胴体は虎、尻尾は蛇の妖怪「鵺」をあやめ御前の夫・源頼政が退治したという伝説に基づいて行われるようになった「伊豆長岡温泉鵺ばらい祭」は、今年で60回目を迎えます。3年前からこの歴史あるお祭りの実行委員長を務めているのは鴨下友秀さん。「私が実行委員会に入ったのは6年前ですが、祖母や母も関わってきた祭りなので、子どもの頃から身近に感じています」。
かつては、鵺が温泉場を練り歩いた鵺ばらい祭ですが、最近は長岡中学校の生徒が大・中・小の鵺たちと、頼政ら鎧(よろい)武者の対決を表現した「鵺踊り」の披露が定着しました。「人前で踊ることをためらっていた子どもたちが稽古を重ね、本番で一生懸命踊る姿に毎回感動します」。
そして、頼政が「弓」で鵺を退治したことに由来して昨年から始まったのが「弓道大会」です。「昨年は、初めてのことで大変でしたが、伊豆中央高校弓道部や弓道会の人たちの協力があり、成功させることができました」。今年は、昨年より出場者の枠を増やしましたが、締め切り前に定員に達するという人気ぶりです。「市外からの参加者が多い反面、市民の皆さんにはあまり知られていないことが課題だと考えています。迫力ある弓術をぜひ会場で見てもらいたいです」と熱く語ります。
普段は旅館業を営む鴨下さんですが、大学卒業後は自動車整備士として働いていました。しかし、跡継ぎがいないという状況に陥った時「旅館の歴史を途絶えさせることは簡単だが、先代が築いたものを自分が守らなくてはいけない」と旅館を継ぐことを決意しました。
これからも鴨下さんは、「鵺ばらい祭」と「旅館」という2つの歴史を守っていくことでしょう。