健康 私のカルテ No441

■ペットボトル症候群について
津島市民病院 内分泌内科医師
和田悠文(わだゆうぶん)

◇ペットボトル症候群とは
ペットボトル症候群とは、スポーツドリンクや清涼飲料水、ジュースなどの糖分が含まれている飲み物を大量に飲むことで急激に発症する糖尿病の症状のことで、正式名称は「清涼飲料水ケトアシドーシス」、「ソフトドリンク・ケトアシドーシス」と言います。
一般的な清涼飲料水には、1Lあたり約100gの糖分が含まれています。これはスティックシュガー30本分に相当し、こういった糖分が多く含まれた飲み物を2L、3Lと大量に摂取することで、血糖値が急激に上昇しやすくなってしまいます。

◇主な症状
ペットボトル症候群の症状は、基本的には一般的な糖尿病と似た症状となります。顕著にみられるのはのどの渇きで、他には多尿、倦怠感、腹痛、嘔吐といったものもあります。
のどの渇きを補うために水分摂取する際に、先ほど挙げたような糖分の多く含まれた飲料を飲んでしまうと、さらに血糖値が上がり、またのどが渇くという悪循環に陥ってしまいます。
こういった悪循環により症状がさらに悪化すると、重度の脱水や、代謝の異常をきたしてしまいます。
この状態を「高浸透圧症候群」「ケトアシドーシス」といい、意識障害や昏睡状態に陥ることもあります。ここまで症状が進行してしまうと緊急で入院治療が必要となり、場合によっては命にかかわることもあります。
治療としては、点滴で体内の水分を補充しながら、血糖を下げる働きのあるインスリンという注射製剤を用います。症状が落ち着いてからは飲み薬の治療に切り替えられる場合もありますが、退院後もインスリンの注射を継続する必要がある場合もあります。

◇予防するには?
ペットボトル症候群を予防するためには、糖分の多く含まれているスポーツドリンクや清涼飲料水、ジュースなどを飲みすぎないようにすることが重要です。水分摂取の際には、糖分の含まれていない、水やお茶を多めに飲むように心がけましょう。
のどが渇いたと感じた時には、既に体は脱水状態に近付いている事が多いため、のどが渇いたと感じる前からこまめに水分を摂取することが大切です。普段から水分摂取の時間を決めることや、トイレに行った後は、コップ1杯ほどの水分を摂取することが推奨されています。
また、コーヒーやアルコールなどの飲料には、利尿作用があり、体内の水分を尿として外へ排出してしまうので、水分補給としては適していません。
ペットボトル症候群は清涼飲料水を摂取する機会の多い20~30歳の若年者に多く見られますが、風邪などの体調不良で食事摂取ができず、スポーツドリンクなどを大量に飲んで水分補給をしていた高齢者にもよく見られるため、上記の点を意識し、水分摂取の機会の増える夏場だけでなく、普段から予防することを心がけていきましょう。