健康 〔院長コラム〕一緒に考えましょう 健康のこと 医療のこと(93)

市民病院 院長
川井 覚

■命に関わる熱中症
近年夏が暑くなり、当院でも熱中症で救急搬送される患者さんが増加しています。熱中症とは、高温多湿な環境で、発汗による体温調節等がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態をさします。熱中症は重症化すると命に関わる病気なので暑い季節は特に注意が必要です。
熱中症については、毎年テレビや新聞などで盛んに注意喚起がなされていますが、それでも当院の救急外来を受診される患者さんのなかには「自分は気を付けていたから大丈夫」と思っていたといわれる方が多くみえます。特に高齢者は暑さを感じにくくなり、汗をかきにくくなっているので、体温調整がうまくいかず、気付いたときは症状がかなり進行しており、入院治療が必要になることもめずらしくありません。
ではどうしたら熱中症を予防できるでしょうか?日中炎天下で外出しているときは多くの人が熱中症に気をつけているものの、夜間室内でも熱中症が発症することもあり、注意が必要です。暑い時間帯に外出を控えることはもちろんのこと、室内でも適度にエアコンと扇風機を使って、室温だけでなく湿度を下げることが重要です。こまめに水分補給をすることも大切ですが、たくさん汗をかいたときは適度に塩分を補給することも必要です。昔から暑い屋外で仕事をする人は塩をなめながら作業したのは理にかなっています。
熱中症の初期には、めまいや立ちくらみ、気分が悪い、筋肉がつるなどの軽度の症状が現れます。これは、暑くなると、血液中の熱を外気に排出して上昇した体温を下げるために、末梢血管に血液が集まり、脳や内臓、筋肉などに供給される血液が減少してしまうためです。
熱中症が起こったことに気付かないままでいると、体内の熱が体の外に放出しきれず、体温が上昇することで重症化し、頭痛や吐き気、体がだるいなどの症状が現れます。さらに熱中症が進行すると、意識障害やけいれん、ひきつけを起こし、最悪の場合は命に関わることもあります。
夏本番はこれからです。熱中症のことを正しく理解し、十分すぎるくらいの対策をしてください。