- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県小牧市
- 広報紙名 : 広報こまき 令和7年5月号
■肝胆膵外科医と脂肪肝
消化器外科 部長医師:杉本 博行
脂肪肝は肝臓に過剰な脂肪が蓄積することにより発生します。健康診断で脂肪肝と言われても、がんと言われるのとは違って軽くうけとめてしまう人もいるでしょう。
しかし、脂肪肝も放置すると重篤な疾患につながることがあります。一般的には内科が扱う疾患ですが、今回は肝胆膵外科医の立場から脂肪肝について解説します。
◇アルコール性脂肪肝
アルコールは肝臓で代謝されますが、その代謝過程で脂肪の合成が促進され、肝臓に脂肪が蓄積します。1日あたりのアルコール摂取量が多い人がなりやすく、過剰摂取により脂肪肝にとどまらず肝硬変へ進展することがあります。肝切除術前に禁酒は必須です。
◇非アルコール性脂肪肝
アルコールをあまり摂取しないにもかかわらず、肝臓に脂肪が過剰に蓄積する疾患です。
高脂肪、高糖質の食事は肝臓での脂肪合成を促進します。清涼飲料水や糖分の多い飲料も原因となり、過剰な栄養摂取は避ける必要があります。肝炎を併発すると非アルコール性脂肪肝炎となり、肝硬変や肝がん発生のリスクが高まります。
◇代謝異常関連脂肪肝疾患
糖尿病やメタボリックシンドロームなどの代謝異常が併存した脂肪肝と定義されており、脂肪肝の新たな概念として、近年提唱されました。早期に診断し、積極的に治療介入を行うことにより、肝障害の進展や心血管系合併症発症の予防を目指しています。
◇肝臓外科と脂肪肝
前述のように脂肪肝が進行すると肝硬変、肝がんが発生することがあり、特に肝硬変では正常肝に比べ、手術中の出血は多くなります。
また、術後は腹水が貯留し、黄疸や意識障害などの肝不全症状が出現するなど、合併症の発生率が増加します。
◇膵臓外科と脂肪肝
膵切除後には脂肪肝が発生しやすいとされています。特に膵頭十二指腸切除後は注意が必要です。脂肪肝は過栄養だけではなく、飢餓で発生することがあります。
バランスの良い食事摂取が大切で、膵機能低下に対しては消化酵素製剤の内服が必要となります。
また、膵切除後に膵機能が高度に低下した場合には消化酵素製剤内服は必須となり、長期に服用を怠るとクワシオルコルとなり、浮腫、皮膚乾燥、腹部膨満、倦怠感などの症状が出現します。
◇おわりに
肝胆膵外科医にとっても脂肪肝は注意すべき疾患です。手術の前に、「手術までに何かしたほうがよいことがありますか?」という質問をよく受けますが、特別なことはありません。
日々の生活習慣が大切です。バランスの取れた食事、適度な運動、体重管理、アルコール制限、規則正しい生活を送るなど、ありふれたことを毎日繰り返すことが重要でそれが脂肪肝の改善につながります。
手術前だけではなく日々の生活から気を付けましょう。
・病院ホームページ
・診療科ホームページ
(本紙14ページの二次元コードをご参照ください。)
問合先:市民病院
【電話】76-4131