- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県豊明市
- 広報紙名 : 広報とよあけ 令和7年5月1日号
◆ヒメタイコウチ~湧水湿地に住む半水生昆虫~
市の天然記念物に指定されている大狭間湿地にはシラタマホシクサを始め湧水湿地特有の稀少な植物が多数生育していますが、この湿地に特有な昆虫と言えばハッチョウトンボとともにこのヒメタイコウチをあげることができます。
体長は約2cmで土と同じ暗褐色をしており、落葉の間や草の根元にいることから、草の上にとまる赤いハッチョウトンボとは違ってなかなかお目にかかることができません。私がヒメタイコウチと出合ったのは、湿地内でのヨシ除去作業中に、驚いて出てきたのを足元で見つけたというのがほとんどです。稀に、草があまり生えていない砂利の上に出てくることがあり、湿地一般公開の際にそんなヒメタイコウチに出合えた方は幸運と言えましょう。
国外では中国や朝鮮半島などにも分布していますが国内の分布は極めて局地的で、東海四県、近畿地方の一部と四国(香川県)に限られています。愛知県のレッドデータブックでは準絶滅危惧種とされ、西尾市では生息地が県指定の天然記念物になっています。
羽は退化し飛べないため移動能力は乏しく、尾端の呼吸管は短いため、池での水中生活には適さず常に湧水のある浅い湿地に頼って生きるヒメタイコウチ。生物の保護には生息環境の保全が何よりも大切であることを教えてくれます。
豊明市史(自然)執筆員 浅野 守彦
※写真は広報紙34ページをご覧ください。