- 発行日 :
- 自治体名 : 三重県津市
- 広報紙名 : 広報つ! 令和7年1月16日号
《足元から伝える 日本人の暮らしの原点》
和装履物専門店 4代目店主
大谷 明(Akira Ohtani)(91)
◇地域の伝統を織り込む草履 多くの人に届けたい
「足やすめ安濃津ばき」は津市で生まれた草履ブランド。肌ざわりの良い伊勢木綿と松阪木綿で鼻緒を作り、台には本畳を使うのが特長で、履き心地の良さから全国に愛用者がいる。
製造販売するのは、丸之内に店を構えて約130年の老舗履物店。約20年前にこの草履を発案した大谷さんは、91歳の今も現役だ。
「店を継いだ当時、履物業界は右肩下がりで店も衰退の方向。だけど私は、日本の履物文化を残したかった。時代に合った履物を作らねばと、商工会議所に相談して必死で取り組みました」。鼻緒の素材として意識したのは、木綿のおむつだった。「赤ちゃんの頃の感覚と母の優しさの象徴だったからです。木綿と畳。日本人の暮らしのベースにあったものを取り入れたくて」
県指定の伝統工芸品、伊勢木綿や松阪木綿の織元と提携し、晴れて安濃津ばきが誕生。しゃれた柄も評判となり、三重ブランドの逸品として有名百貨店からオファーが来るようになった。
対面販売を軸に、最近はネット通販も増え、海外への土産としても人気が高い。「多くの人に安濃津ばきを届けたい。職人技の継承は難しいけれど、何とか残す方法を模索しています」
日本の文化を繋ぎたいという気概を胸に、今日も店に立つ。
・「クロックスに負けやんように」と思ってます!
・草履は足裏が鍛えられます。室内用にも◎
PROFILE
1934年津市生まれ。銀行を退職後、2003年に母親から大谷はきもの店を事業承継。安濃津ばきが「三重県ブランドチャレンジャー」三重県知事賞、「NIPPON OMIYAGE AWARD」全国観光土産品連盟会長賞などを受賞。山歩きが好き。