- 発行日 :
- 自治体名 : 三重県尾鷲市
- 広報紙名 : 広報おわせ 令和7年8月号
■クサギ(シソ科)
真夏の散歩道、あちこちに咲いているクサギの白い花が目につきます。春、秋に比べ野山に咲く花が少ないこの季節、虫たちが蜜を求めてクサギの花に集まっています。クサギは全国に分布する落葉性の低木で、葉をもむと独特な臭いがするところから臭木(クサギ)の名がついています。葉の臭いとは対照的に、花はジャスミンのような香りを放ち、夏の間次々と開きます。秋になると肉厚で真紅に色づいた萼(がく)が開き、その中心に藍色(あいいろ)に熟した小豆大の実が現れます。クサギはこの赤と青のコントラストによって鳥の注意を引いています。まんまと引き寄せられた鳥は実を食べ、タネを離れた所へ運ぶことになります。
葉は加熱すると臭いが消え、若葉は山菜として茹でたり天ぷらにして食べることができ、また葉や枝を乾燥し煎じたものは民間薬としてリウマチや腫物(はれもの)、高血圧の治療に利用されています。日本ではその辺に普通に見られ雑木扱いされていますが、ヨーロッパでは園芸植物として庭園に多く植栽されています。藍色の実は古くから染料として用いられ、絹糸を鮮やかな空色に染め上げることができます。クサギはワラビやゼンマイなどと同じように人との関わりが深い植物の1つです。