くらし 鳥羽・海藻文化革命 岩尾博士の海藻博物記vol.39

~美しい海藻ハネモ~
ハネモという海藻がある。鳥の羽のように繊細で大変美しい見た目の10cmに満たないくらいの大きさの緑色の海藻である。この海藻は昨年、名古屋大学の菅島臨海実験所の研究グループによる全ゲノム解読成功が発表された海藻でもある。鳥羽海域にたくさん生えてはいるが、一つ所に大量に群落を作って生えている場所は知らない。よく見かけるのはタイドプール(潮だまり)の石影のような少し暗いところや、潮が引いても海面に出ない膝くらいまでの深さの場所である。ただ、なかなか一般の人は見つけることはないだろうな、とここで紹介することもしていなかった。また、ちぎれたものが浜に打ちあがるようなこともほとんどないだろうし…。しかし、今回、研究所の桟橋のフロート、それも水面ギリギリの場所に生えているのを発見し、こういうところに生えるなら、みんなも探せばこの美しさを体験できるだろうな、と思い、コラムに取り上げた。
美しいだけなの?と思われるかもしれない。そうですよ。と言いたいところだが、この海藻、巨大な単細胞藻類としても知られており、その10cmの体すべてが一つの細胞でできている。正確には、細胞分裂をしても細胞を仕切る隔膜が作られることがない多核管状体緑藻と呼ばれる。そして、さらに面白いことに、ハネモをピンセットでつまみつぶして、内容物を絞り出し、それを海水にいれ適した環境に置いておくと、また元の体に戻るという修復能力を持っている。この能力が注目されており、前述の全ゲノム解読などの研究が盛んにおこなわれている海藻でもあるのだ。

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