文化 【文化財コラム Vol.6】鳥羽のきらり 歴史遺産語り

鳥羽市の豊かな歴史遺産と、文化財の調査や保全を担当する文化財専門員の活動を紹介します。

■知られざる鳥羽の魅力をたっぷりお届けします!
豊田祥三 鳥羽市文化財専門員

▽九鬼だけではない!鳥羽藩主を一番長く務めた稲垣氏
7月下旬に、鳥羽四丁目の鳥羽大庄屋かどやで「稲垣家資料展」が開催され、鳥羽に遺された稲垣家関係の資料が展示されました。みなさんは稲垣氏のことをご存じでしょうか?
稲垣家は、鳥羽藩の最後の藩主で、徳川家と関係が深い譜代大名でした。享保10年(1725)に稲垣昭あき賢かたが下野烏山藩(現在の栃木県那須烏山市)から入封し、その後、8代にわたり鳥羽藩主として明治を迎えるまで約140年間鳥羽を治めた大名です。鳥羽藩といえば九鬼氏が有名ですが、実は最も長く鳥羽を治めたのは稲垣氏なのです。
稲垣家は、着任翌年の享保11年に鳥羽藩内の各村を把握するため、指出帳を提出させています。在任中は、度重なる災害などもあり財政事情が厳しく、幕末の戊辰戦争では幕府側に味方したために新政府側から多大な賠償金を請求されるなど難しい藩政を強いられました。
市内には稲垣家ゆかりの場所があります。菩提寺は鳥羽三丁目の光岳寺で、霊廟があります。また、二丁目の常安寺には6代目長明~8代目長敬の墓があります。家紋は抱だき茗荷(みょうが)で、鳥羽城跡の発掘調査ではこの家紋の入った瓦が出土しています。また、稲垣家より近世の資料が市立図書館に寄贈されており7月の展示でも一部が公開されました。
鳥羽藩を治めた大名は九鬼家だけではありません。最も長く治めた大名は稲垣家であることをぜひ知っていただけたらと思います。

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