- 発行日 :
- 自治体名 : 滋賀県守山市
- 広報紙名 : 広報もりやま 令和7年8月15日号
■国宝と出会う
佐川美術館
学芸員:藤井 康憲(ふじいやすのり)
大阪・関西万博の開催に合わせて、国宝が勢ぞろいの展覧会が京都、大阪、奈良の関西3都市で開催された記憶も新しく、世間の注目を集めた「国宝」。この国宝という言葉が用いられるようになったのは、明治期、全国の文化財を調査し、保護する政策が政府機関によって始められた時です。
文化財保護法に基づいて指定された重要文化財のうち意匠や技術に優れ、学術的な価値が高く、世界に誇るものが、文部科学大臣によって国宝に指定されます。今やその件数は1、100件以上にも上ります。
ところで、皆さんは佐川美術館にも国宝の梵鐘(ぼんしょう)が所蔵されていることをご存じでしょうか。平安時代の858年に鋳造され、延暦寺の西塔・宝幢院(ほうどういん)に伝わったことが鐘の中の銘文からうかがえます。銘により鋳造時期が明らかな梵鐘としては国内で6番目に古く、貴重な例として国宝に指定されました。
著しく縦長のスマートなフォルムは古い時代の梵鐘にしばしば見られますが、とりわけ丸みを帯びていない直線的なシルエットは他に類を見ません。異色ともいえるそのスタイリッシュな姿には圧倒されます。
また、頂上の吊(つ)り手(龍(りゅう)の頭部をかたどった竜頭(りゅうず))や、鐘をつく八弁の蓮華(れんげ)の形が象られた撞座(つきざ)は、装飾性を抑えた造形です。まさにシンプルイズベスト、格調高く洗練されたそのたたずまいが際立ちます。
4年ぶりの公開となる梵鐘は、9月28日(日)までご覧いただけます。
※開館情報は、佐川美術館ホームページでご確認いただくか、電話〔【電話】585-7800〕でお問い合わせください。