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- 自治体名 : 滋賀県愛荘町
- 広報紙名 : 広報あいしょう 2025年9月号
軽野神社(岩倉)の本殿は、平成15年7月10日に町指定有形文化財に指定されています。平成30年の本殿の屋根などの修理によって新たな発見がありました。
■軽野神社(岩倉)の概要
軽野神社は、町内に2つ存在します。岩倉の軽野神社と、もう一つは蚊野の軽野神社です。
岩倉にある軽野神社は、岩倉川の上流域の岩倉地先に位置し、祭神は、袁邪本王(おさほのみこ)等です。氏子は岩倉、東出、西出、松尾寺、斧磨、竹原、常安寺、円城寺、深草の9集落及び甲良町の長寺と正楽寺の2集落となります。
当社は、「堅井之大宮」の名称で親しまれていますが、明治14年(1881)に軽野神社と改称し現在に至ります。創建は、中世以降であり、安孫子郷の鎮守社として在地の土豪と深い結びつきを保っていました。明応6年(1497)に、再建された際の棟札には鞍智氏、安孫子氏の在地土豪の墨書が残っています。
■軽野神社(岩倉)本殿の修理工事
当社の本殿は、三間社の隅木入春日造です。春日造は奈良の春日大社本殿形式に代表される名称で、切妻造の妻入り社殿に片流れの庇(ひさし)を付けた本殿のことです。滋賀県内には春日造本殿は少なく、春日社殿の系統を引く建物として、平成15年(2003)7月10日に町指定有形文化財に指定されています。
以前の本殿屋根葺替えから約30年経過し、屋根等の破損や劣化が進んでいたため、平成30年度に修理工事を実施しています。修理工事での新たな発見は、今まで考えられていたより、(1)建築年が古い年代であったこと、(2)屋根葺きの材料が異なっていたことの2点です。
それまで本殿の建築年は、本殿擬宝珠から宝永2年(1705)とされていました。しかし、棟木に元禄3年庚午年3月建立の墨書が発見され、建築年が元禄3年(1690)であることがわかりました。つまり本殿が建築されて335年が経過しているといえます。次に、本殿屋根の古材には「柿葺き」材が多く使用されていたこともわかりました。よって、本殿屋根は、檜皮葺き以前は「柿葺き」であった可能性があります。
修理することは、古い物、傷んでいる箇所に手を入れるだけではなく、今回のように新しい事実が判明し情報を修正することにつながります。今後も町内の貴重な文化財を後世に伝えられるように行っていきます。
歴史文化博物館学芸員 竹村吉史