文化 シリーズ 福知山の文化財 収蔵資料紹介(90)

■「脚絆(きゃはん)」
所蔵:福知山市教育委員会

脛(すね)は、屈強な武士であった弁慶ですら痛がって泣いたと例えられるほど、人にとって重要な部分です。この脛を保護し、活動しやすくするための服装品のひとつに脚絆があります。主に布や皮、藁で作られており、膝から下を覆うよう装着します。江戸時代から全国的に広がり、飛脚や旅人、大工が足の擦り傷や打撲などのケガを防止するために着用していました。また、農作業や山仕事の際には、小枝や虫から足を護り、防寒の役割もしていました。
写真(1)の脚絆は旧菟原小学校から寄贈されたものです。脛最大長38cm・丈36cm。藍染木綿を使用し、襠(まち)を足した変形の四角で一対に8個の小駒(こはぜ)(写真(2))が付いています。
写真(3)は西洋式の巻脚絆(まききゃはん)といい、細い帯状で幅8cm、カーキ色の布製です。旧菟原小学校から寄贈されたもので、白糸で「市田」と縫われています。写真の巻脚絆がかつて、どこで使用されていたかは不明ですが、この巻き付けるタイプの脚絆は軍隊で使用していた洋風ゲートルからきたものです。通常の脚絆と同じように保護、防寒の目的と、脚絆が裾を抑えることで、砂塵や害虫が入ることを防ぎ、障害物に引っかかるリスクを減少することもできます。さらに、長時間の歩行を余儀なくされた戦中において、適度に下肢を締め付けることで鬱血を防ぎ、脚の疲労を軽減する効果もあるとされます。
現在では、巻脚絆は姿を消し、レギンス型の脚絆が主流となっています。業務上の安全のために着用を義務付けている業種もある中で、福知山市においては「消防操法大会」で消防団員が白い脚絆を身に着けている姿を見ることができます。
日常的にはあまり使われなくなっていますが、(1)のような脚絆はお祭りで着用される伝統衣装でもあります。
※掲載の写真は本紙をご覧ください。

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