健康 京丹後から世界へ 第1回世界長寿サミット開催(2)

■さまざまな研究から探る 健康で幸福な長寿社会
▽12の国と地域 寿命や健康の研究発表を紹介
4日間のサミットで発表された研究やシンポジウム、カンファレンスの数は実に30を超え、老化と健康、寿命、食事、高齢化社会の課題・対策に至るまでさまざまな内容が話されました。
中でも、多くの研究やシンポジウムで語られたのが食事と運動についてで、食べるものや食生活の習慣、腸内環境などの研究のほかに、視力や口腔、筋肉などの身体の機能的な構造と運動の関係性など、あらゆる角度からアプローチが行われました。その中で、京丹後の健康長寿の秘訣を解き明かすため京都府立医科大学と市が協力して行ってきた「京丹後長寿コホート研究」のデータなども披露されました。
今回行われた発表やシンポジウムについて、その中から一部を要約して紹介します。

▽スティーブ・ホーバス博士
ケンブリッジアルトス・ラボ/イギリス
348種の哺乳類のデータから老化に共通するパターンを特定。若年期に始まるメチル化の変化が老年期にも影響するという「エピジェネティック・クロック」の存在を提唱し、人間の老化予測にも応用可能なことを示す。今後、老化の理解と活用に新たな可能性が広がるとした。

▽的場聖明博士ほか
京都府立医科大学/日本
京丹後長寿コホート研究を通して長寿の背景因子を解析。調査データを活用した加齢や精神疾患、腰痛、骨折などが活動制限リスクに影響することが明らかに。地域特性を活かした予防戦略構築が、健康長寿社会の実現に重要であると示した。

▽内藤裕二博士ほか
京都府立医科大学/日本
京丹後の高齢者786人を対象に腸内細菌や食生活とフレイルの関係を調査。フレイル群は植物性タンパク質や食物繊維、ミネラル・ビタミンの摂取が少なく短鎖脂肪酸産生菌も少なかった。食事と腸内環境の乱れがフレイルに関与している可能性が高く、栄養・腸内フローラに焦点を当てた介入の重要性を強調した。

▽松田智生博士
三菱総合研究所/日本
急速に進む高齢化を「危機」ではなく「機会」と捉え、世代を超えて支え合う社会「プラチナ社会」の実現を提唱。高齢者の経験と知恵を社会に還元し、多世代交流や地域資源を活かした包括的なまちづくりが必要と強調した。

▽フランシス・K・L・チャン博士
香港中文大学/香港
腸内環境が炎症抑制や免疫、認知機能維持に貢献している可能性があると報告。出生時の腸内細菌の特徴や成長に伴う変化から「腸内年齢時計」の存在が示唆され、加齢による疾患予防には腸の若さを保つことが鍵と述べた。

▽ステファニア・バンディーニ博士
ミラノ・ビコッカ大学/イタリア
高齢化が進む社会で健康長寿を実現するには都市設計や地域サービスのあり方が鍵となる。感情に寄り添う􀀀I(感性コンピューティング)と都市シミュレーションを活用し、サービスアクセスや感情的な歩きやすさを定量化。政策や都市計画に反映し、高齢者が安心して暮らせる環境整備を目指すべきであると述べた。

この他にも20人の学者や専門家が長寿に関するさまざまな研究成果などを発表

■沢山の来場者が訪れました!“美食と観光”企業の展示ブース
市民公開講座では美食や観光、地場産品などのブースが出展して、サミットを盛り上げました。2024年に受賞した「美食都市アワード」を支えた生産者や料理人が、京丹後の野菜やお酒を来場者に振る舞い、多くの人に京丹後の食の魅力を伝えました。

■世界の人々の健康長寿を応援し宣言
サミット最終日の4日目には、総括講演を三菱総研の松田博士とミラノ・ビコッカ大学のバンディーニ博士が行い、このサミットが、世界の長寿と健康を願う人々にとって有意義なものであることが再認識されました。
最後は、サミットを締めくくる以下の4項目を夜久大会会長が宣言。大きな拍手の中で第1回世界長寿サミットは閉会しました。

■世界の健康長寿を推進するために~第1回世界長寿サミット宣言
1.絆を育み、コミュニケーションを絶やさないこと。
2.植物性たんぱく質や食物繊維の豊富な食事を、仲間と共に楽しむこと。
3.規則正しい生活と運動習慣を日々の暮らしに取り入れること。
4.感謝の心をもち、生きがいを感じる毎日を大切にすること。