- 発行日 :
 - 自治体名 : 京都府京丹後市
 - 広報紙名 : 広報京丹後 2025年11月号(第260号)
 
丹の国・丹能会能楽鑑賞会が8月31日、アグリセンター大宮で開催され、170人を超える来場者が能楽の魅力に酔いしれた。この鑑賞会を主催したのは、観世流(かんぜりゅう)能楽師の林本大(はやしもとだい)先生(重要無形文化財総合指定保持者)指導のもと大宮町を拠点に大人8人で協力し活動する「丹(に)の国(くに)丹能会(たんのうかい)」。代表を務めるのは、荒田(あらた)ケイさん(大宮町)。そして、広報などを担当する近藤正勝(こんどうまさかつ)さん(大宮町)。会の中心となり活動する二人に話を聞いた。
■出会いを機に
荒田さんが能と出会ったのは大学時代。入部した能楽部で能の奥深さを知り、惹かれていった。舞の所作やせりふの発声などの稽古を半世紀以上続け、5年ほど前から「能をもっと身近なものにしたい」との思いで、プロの能役者による公演や子どもたちと出演する発表会などを催している。きっかけは、能の継承に力を入れる観世流能楽師の林本先生との出会い。林本先生の舞う姿や普及活動に取り組む姿勢に感銘を受けた。自宅の稽古場を見た林本先生の「舞台にできる」との言葉に「自宅から能を広められる」と意欲が湧き、稽古場を改修して舞台に仕上げた。現在、丹能会の発表会は自宅の舞台を会場に開催している。
近藤さんは、舞台公演などへの出演経験があり、知人の紹介で荒田さん主催の能の舞台に上がったのを機に能の魅力に惹かれ、今では活動に賛同し、能の研鑽(さん)はもちろん、会の広報活動にも余念がない。
■能の魅力が学びに
室町時代に成立した能は、長い歳月をかけ日本の古典芸能として確立された。特徴的な面と美しい装束を用い、能舞台で舞う歌舞劇。
荒田さんと近藤さんが感じる魅力は、劇中に感じられる歴史や世界観、静と動の表現、そして、多くを表現しない能の体裁だ。京丹後にゆかりのある小野小町が主人公の演目、繊細な所作や躍動感のある舞、演目の情景や場面の想像を必要とする能舞台。
これらを体感することで、インターネットやスマートフォンなどを使いすぐに答えがわかってしまう現代において、自ら感じて想像することが必要となる能は、想像力を養い、物事の本質を捉える力を身に付けるのに役に立つ。歴史や文化に触れる機会となり、地域の祭りや地元の歴史に興味が湧いてくる。多くのことに目を向け知ることは、豊かな心を育む糧となる。そう思いながら、二人は活動を続けている。
■夢は尽きない
荒田さんは能を通して、子どもたちに自発性も伸ばしてほしいと考えている。やらされるのではなく、自ら考えて動く。8月31日の鑑賞会第一部では、子どもたちが能動的に稽古に取り組んだ成果が存分に出ていた。出演した高橋市ノ助(たかはしいちのすけ)くん(大宮第一小・4年)は「人前で精一杯舞うことができて良かった。もっと練習して上達していきたい」と話し、姉妹で出演した本田多恵子(ほんだたえこ)さん(大宮第一小・4年)と芽衣子(めいこ)さん(同小・1年)は、役になりきることを心がけたことや第二部の林本先生の舞う姿が格好良かった、と振り返った。荒田さんは今回の鑑賞会を子どもたちの成長が見られたことや、大勢の観客に本物の能を見ていただくことができて大成功と振り返った。
市全体で能が広まること、子ども、大人が隔たりなく文化に触れることができるまちになれば良い。そう願いながら、荒田さんは「夢は尽きない!」と力強く話を締めくくった―――。
