健康 シリーズ健康エッセイ vol.151

■「心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)」その治療の進歩について
錦見医院 錦見文花医師

心臓は4つの部屋に分かれています。全身から戻ってきた血液を右側の部屋で受取り、まず肺に送ってきれいな空気と交換し、その血液を再度左側の部屋で受け取り、ポンプのように全身に送って血液を循環させています。
心臓の各部屋の間と、心臓の出入り部分に「弁」というドアのような膜がついており、血液が行くときにはパカっと開き、行かないときにはしっかり閉じるという役割を果たしています。「心臓弁膜症」は、弁に異常をきたし、開きにくく血液を送り出せない・逆に閉じずに逆流してしまう状態のことです。重症になると、心不全(息切れ、足のむくみなど)、狭心症(胸の痛み)、突然死などの症状を引き起こします。
以前は、重症の弁膜症を治すためには開胸手術が必要だったのですが、最近では「カテーテル治療」という新しい方法の研究が進んでいます。心臓弁膜症のカテーテル治療とは足の付け根や首周囲の血管から管を入れて、心臓に新しい人工の弁を入れたり、逆流しないようにクリップで止めたりする治療です。現在は主に2種類の弁膜症に対するカテーテル治療が一般的になっていますが、他の弁膜症へも、研究・実施が進み実施されていく予定です。
カテーテル治療は、従来の開胸手術に比べ体への負担が少なく、ご高齢の方にも治療ができる可能性が上がります。とはいえ、その弁膜症の種類・原因や体の状態により、治療の適応にならないこともあり、治療に伴う合併症も存在します。また、開胸手術に関しても、小さい傷口でできる技術が進んできています。まず治療を行うかどうか、どんな方法で治療を行うかは、色々な検査を行い専門家同士の相談の上で、また一番重要な、患者さんやご家族のご意向をふまえての決定となります。
心臓弁膜症は、聴診での心雑音や、息切れや足のむくみなどのご症状から見つかります。そのようなご症状があれば、まずは診療所や病院でご相談いただきたいと思います。