くらし 【特集】行ってみよう!オープンファクトリーOPEN FACTORY(4)

■製造工程に密着!
1 製品に合った材料を選ぶ

2 溶解・鋳造
金属は溶解炉で溶かします。ここで大切なのは、温度管理と不純物を取り除くことです。写真の双子炉は、2つの丸い炉で構成されています。
生産中は、片方の炉からラドル(写真)で溶けた金属をすくい取り、ダイカストマシンで圧力をかけて型に流し込みます。もう片方の炉では、新しい材料を溶かして不純物を取り除く作業を行います。こうすることで、生産中の溶湯の温度が安定します。
大阪中央ダイカストHDでは双子炉を13基と多く保有しており、関西では他にありません。

溶湯を金型に流し込むときの温度や圧力が適切でないと、型内にうまく行きわたらずに途中で固まったり、見た目に問題が出て不良になります。鋳造では、そうした条件をしっかり管理する技術が大切です。

※詳細は、本紙P.6をご覧ください。

ベテラン社員 豊山さん
金型が開いて製品が出てくる瞬間が見どころです。自分が手掛けた製品がどんどん出来上がる様子を見るのは楽しいです。鋳造の仕事をする中で、もっと技術を身につけたいと思うようになり、今も勉強を続けています。自分が作った部品を見かけると、とてもやりがいを感じます。

◆ダイカストに必要な「熱収縮の計算」って?
ダイカストの設計で難しいものの一つに、熱収縮の計算があります。物質は加熱されると寸法が大きくなり、その後温度が低くなると収縮します。これを熱収縮と呼びます。鋳造時は熱膨張の状態ですが、2~3週間かけてアルミニウムの強度や寸法が定まってきます。熱収縮には気温の変化や製品の形などが影響するため、鋳造段階でミクロン単位の寸法変化を予測することは難しいです。

■大阪中央ダイカストHD
人々の暮らしを支える「実は身近に」を作る会社
ダイカストとプラスチックの事業を展開しています。自動車・産業機器・建築金物・家電など、世界中の「実は身近に」あるものを作る会社です。

◆ダイカストって何?
ダイカストとは、溶かした金属を圧力をかけて型に流し込んで製品を作る鋳造技術のことです。
圧力をかけない一般的な鋳造方法と異なり、高い寸法精度かつ複雑な形状で生産することができます。
大阪中央ダイカストHDでは、その中でも一般的に難しいと言われる「薄くて高さのある製品」を得意としています。
特に難しい案件では、鋳造方案(金型形状や金属を流し込む条件)の決定に2ヶ月かかることもあります。予測できる問題を未然に防ぐために、培ってきた過去のデータと技術を活かして設計しています。
方案を考えるのはベテランでも難しいですが、それがこの仕事の面白さであり、今はその技術を若手へと受け継いでいます。

◆主な取扱製品
自動車関連の部品(最近は電気自動車関係)、産業機器(ロボットなど)、ドアのハンドルや引き戸の取っ手、新幹線の荷棚のL字部分など。

3 加工して仕上げ
鋳造の段階ではネジ穴を切ったり、100分の1ミリの平面を出すことはできないため、NC旋盤などを用いて加工します。
NC旋盤とはコンピュータ制御によって高精度に加工する機械です。機械の動きをプログラムで指示することで、複雑な形状や細かい寸法でも、一貫して高精度かつ短時間で加工することができます。

◆津田さん的魅力ポイント!
鋳造・加工を一貫対応
鋳造から加工まで両方行える所は珍しい!それを可能とする企業力と広い敷地に注目しました。従来は鋳造のみで、加工は加工業者に依頼していたそうですが、ダイカストに付加価値をつけるために自社で加工するようになったとのこと。一貫して生産することで、細かな修正にも素早く対応できるそうです。

◆加工の難しさは
製品の寸法精度は、使う刃物とプログラムの出来に大きく左右されます。形状や寸法に合った刃物の選定が必要ですし、品質を保ちながら効率よく大量生産するためには、1秒でも早く加工できるプログラムが求められます。

4 検査
最後は人の目で検査しています。一つ一つ丁寧に検査し、問題があれば製造部にフィードバックされます。
最近では、AIを活用した画像検査にもチャレンジしています。

若手社員 竹内さん
プログラムは複雑なものを作ることもあります。そのため、事前に加工箇所や精度をしっかり理解しないといけません。これに慣れるまでにけっこう苦労しました。

◆ものづくりの楽しさを広めるため、万博に出展しました
クラゲ館「ものづくりワークショップ」に、大阪中央ダイカストHDが出展しました。「未来のクラゲをデザインする」というテーマで、オリジナルのクラゲキーホルダーを作りました。

地域の魅力発見ツアー「やりなはれゾーン」で「オープンファクトリーFactorISM in 大東市」と題して市内のものづくり企業によるワークショップを開催しました。

◆地域との関わり
工場内が通学路になっています
朝は工場内の遊歩道が学生たちの通学路になっています。そのため社員が旗を持って挨拶、交通整備、清掃する姿も。
将来一緒に働く人が現れることを期待しながら、学生たちを見守っています。