- 発行日 :
- 自治体名 : 大阪府東大阪市
- 広報紙名 : 東大阪市政だより 令和7年(2025年)4月号
今回のええもんみっけは「稲田の桃林」についてご紹介します。
享和元(1801)年刊行の『河内名所図会』には「稲田桃林」と題して、稲田村に咲き誇る桃林の中で川舟や徒歩で花見に興じる人の姿が描かれています。この挿絵には日下の詩人・生駒山人の漢詩が添えられ、十里にわたる桃林を中国武陵渓の桃源郷になぞらえて称賛しています。
稲田桃林の詳細は明確ではありませんが、享保20(1735)年刊の『五畿内志』には、若江郡の土産として「稲田諸福の二村に繁殖す」と記載があります。また、安永5(1776)年に作成された『河内国細見図』には楠根川東岸から菱江川東岸まで、稲田村の広い範囲に桃林が描かれ、江戸時代の中ごろには桃の名所であったことがわかります。最盛期には稲田村の7割が桃林であったともいわれていますが、明治18(1885)年の淀川の大洪水によりほとんどが姿を消しました。このように稲田の桃林は有名な名所として知られていた一方、『五畿内志』には蛇草村が桃の産地と書かれ、また荒川と永和には、桃の木という小字(地名)があるなど、かつてはいくつかの桃林があったと考えられています。
現在は、地元の有志による再生計画のもと、稲田地区の第二寝屋川堤防沿いや周りの道路・公園に稲田桃が植えられ、新たな桃林として親しまれています。4月上旬まで花を楽しむことができます。ぜひ春を感じにお出かけください。
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