くらし 〔特集〕SDGs 好きや得意が、サステナブルな未来をつくる 1
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- 発行日 :
- 自治体名 : 兵庫県神戸市
- 広報紙名 : 広報紙KOBE 2025年(令和7年)9月号
フードロス、環境保全、障がい者の就労支援、教育やパートナーシップなど。神戸には、SDGsに取り組むユニークな団体がたくさんあります。今回は、神戸SDGs表彰を受けた4団体にインタビュー。
地域に根差した活動からは、考えるヒントやアクションの工夫がいっぱいです。
・神戸SDGs表彰とは?
SDGsの達成に貢献している団体または個人を、神戸市が表彰しています。2022年にスタートし、大賞、奨励賞、功労賞があります。
◆前日のパンから始まるおいしくて幸せな循環
株式会社ケルン 代表取締役CEO 壷井豪さん 2022年度(奨励賞)
パン専門店「ケルン」では、前日に売れ残ったパンを袋売りする「ツナグパン」を販売。同時に、ケルンでパンが買えるコインを購入者と福祉施設に贈り、食品ロス対策と社会支援に貢献しています。
・ツナグパンが生まれた背景や想いとは?
私は以前から、閉店後に廃棄されるパンへの違和感や、阪神・淡路大震災で感じた助け合う大切さ、パンを買いに来るのが難しい人にもパンを届けたいという想いを持っていました。そこで、この業界の社会課題であるフードロス問題を解決しながら、複合的に世の中が幸せになるシステムって何だろうと考えていました。
・印象的なエピソードを教えてください
今はエシカルコインを手渡ししていますが、当初は紙袋に入れていて。気づかずに捨てていたお客様がいて驚きましたが、すぐうれしくなりました。というのは、このお客様は社会貢献のためではなく、純粋にツナグパンが欲しくて購入してくださったということだからです。持続的な支援には、関わる人の努力を前提とするのではなく、人の欲求に訴えかける仕組みづくりが何より大切です。だから、ツナグパンの仕組みに太鼓判を押してもらったような気持ちになりました。
・SDGsのアクションを起こすヒントは?
自分の困りごとに、他の人も同じように困っているのであれば、それは解決する価値があると思います。そしてアクションを起こすときには、何事も自分の目と耳で確かめてください。大切なのは、現場の人や専門家に直接会って、話を聞いてみるということです。
◆五感を使った食と環境の体験で課題解決力が磨かれていく
NPO法人Peace and Nature 創立者and代表理事 バハラムイナンルさん2023年(大賞)
「Peace and Nature」では、多国籍の若者たちがSDGs体験を通して、農家の高齢化や放置竹林といった地域の課題に向き合い、持続可能な未来を担う「グリーンリーダー」を育てる活動を行っています。
・どのような活動をされていますか?
自然から学び、自分の頭で考えて、試行錯誤しながら解決する力(起業家精神)を養うプログラムを行っています。例えば、土づくり・栽培・包装・価格設定など、農産物の生産から販売までの協働作業を通して、自分の得意なことを見つけたり、道具が壊れても捨てずに修理する工夫をしたり。そういった私たちの活動を通じて、自分たちの手で地域課題を解決できて、ゆくゆくは平和に貢献できることに気づいてもらいたいと思っています。
・多様な国の人が集まる場での学びとは?
これまで、合計49カ国の人たちが足を運んでくれました。例えば、多様な国籍の人たちに自国料理を教えてもらうと、文化の違いが体感できます。そして、同じ人間として共感できることにも気づきます。これまでスペインのパエリア、ウクライナの餃子(ワレニキ)、タンザニアのカレーなどを作りました。楽しみながら、国際感覚が身につきます。
・地域でSDGs活動を始めるアドバイスを
私は草刈りなど、地域の農家の困りごとを手伝いながら、徐々に信頼関係を築いてきました。彼らの協力なくしては、私たちの活動は成り立ちません。まず自分ができることは何だろうと考えてみることが第一歩です。都市と農村が近いのが神戸の魅力。ぜひ、農家の生きる知恵に触れてみてください。
