くらし 〔Column〕生きる

■「差別」の事例から考える Vol.3
◇障がいのある人は「トラブルを起こすかも?」
ひとくくりにして考えないで

前回は、障がいのある人が「無力」だとみなされているケースの紹介でしたが、今回は障がいのある人への偏見として、「何かトラブルがあるかもしれない」という事例の紹介です。
あるスポーツジムの入会規定に、精神障がい者は利用できない旨が書かれていました。それを読んで不安に思った精神障がいのある人が、行政の窓口に相談したところ、担当者は問題だと思い、事業者に障害者差別解消法の説明に行きました。すると、スポーツジム側は、過去に精神障がいのある人が突然暴れ、周りの人とトラブルになったことがあるので記載しているが、一律に入会を拒否しているわけではなく、実際は精神障がいのある人も入会していると説明されました。
この件は、入会規定に特定の障がいのある人を排除する規定があることが「差別」といえます。過去にトラブルがあっても、そのトラブルを精神障がいと関連付けることは不適切です。「抽象的な危険を理由にサービス提供を断ることは許されない」と障害者差別解消法の基本方針でも定められています。
スポーツジムは、実際には精神障がいのある人を受け入れていると弁明しましたが、この規定があることを知って孤立感を深めた人や、病気を隠さなければならないと思った人もいたのではないでしょうか。
行政による指導もあって、このスポーツジムの入会規定の差別的な文言は撤廃されました。障がいのある人を「ひとくくり」にして排除することはあってはならないことです。
(公財)世界人権問題研究センター研究員 松波めぐみ

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