文化 歴史探訪 シリーズまちかど文化財

■江戸時代の絵図に描かれた古墳
丹波市文化財保護審議会委員 山内 順子

写真(1)は、現在の春日町坂地区・歌道谷地区、氷上町北野地区によって、入山して柴刈りをする権利などについての裁判のために作成された絵図です。絵図裏面の記載から、江戸時代元文3年(1738年)に描かれたことがわかります。
写真(2)は、坂地区と北野地区の中間の山裾部分を拡大したもので、小さな丘のようなものが8つと、その丘の各々(おのおの)に入口のようなものが描かれています。これらは何を表現しているのでしょうか。
現在この場所には「坂古墳群」があることがわかっており、その古墳群の分布図と絵図を照合すると、絵図に描かれた小さな丘とほぼ一致しています。つまり、小さな丘は古墳の墳丘で、遺体をおさめる石室に通じる入口も描いていることがわかったのです。
さらに詳しく見ると、絵図の左端の墳丘だけ、頂上にふくらみが2つあるのがわかります。ほとんどの「坂古墳群」は、横からみるとなだらかな円錐形をした墳丘を持つ円墳ですが、絵図にある8つの古墳の一番左端に位置する古墳は「坂2号墳」と名付けられた前方後円墳で、横から見ると、まさに絵のような形になっており、正確に観察して描かれたことがわかります。また絵図には、現在は失われた「親王塚古墳」についても描かれています。
江戸時代と古墳時代とは千年以上の隔たりがあるものの、古墳の姿や分布を知る上で、江戸時代の絵図も参考になることがよくわかる実例です。

写真(1)…江戸時代に描かれた現在の春日町坂地区・歌道谷地区、氷上町北野地区の絵図
写真(2)…坂地区と北野地区中間の山裾部分の古墳
※写真は本紙をご確認ください。

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