文化 新温泉町森林・林業ビジョン(1)

私たちのまちは、町域の83%が森林で占められています。
豊かな森林は、木材を産出するだけでなく、良質な水を貯え、土砂災害を抑え、地球温暖化を緩和し、生き物を育み、人の心を癒します。また、山の栄養は水の流れによって、田畑を潤し、海に流れ、町自慢の松葉がにやほたるいか等が生息する豊かな海づくりを支えています。森林は、私たちが生きる環境を守るための様々な役割を果たしてくれています。
しかし、森林を守り育てる林業は原木価格の低迷、木材消費の減少、担い手の不足など様々な課題を抱えています。また住民の森林への関心も薄れていく中、森林の手入れは滞り、山の荒廃が進んでいます。
森林・林業の現状と課題や森林との様々な関わりを捉え、森林のあるべき姿と今後の取組を「新温泉町森林・林業ビジョン」としてとりまとめました。

■新温泉町が抱える森林の課題
▽手入れ不足の森林による災害の危険性
本町の人工林の多くは本格的な利用期(50年生超)を迎えており、積極的に伐採して森林を若返らせる時期でもあります。しかし、原木価格の低迷や搬出コストの増加などによる採算性の悪化に加え、林業の担い手不足等により伐採が行われず、また手入れ(間伐、枝打ち等)されずに放置された森林が増加しています。
手入れがされない過密な森林は薄暗く日が差さないため下層植物の生育が貧弱になり、土壌が雨水によって浸食されやすく、土砂流出の増加、保水力の低下が心配されるほか、個々の木の根張範囲が狭く、風倒木災害につながります。

▽持続的な林業経営のために
植えた木が育つと伐採して売り、再び植林して、繰り返し土地を利用する循環ができれば林業は継続でき、森林の荒廃は少なくなります。しかし、再び植林するほどの収入を得るためには林業の収益性を大きく高めなければなりません。そのため「作業道の整備」「林業機械」等のインフラの整備を進めるとともに「施業の集約化」」「森林情報のデジタル化」等で作業の効率化を図る必要があります。また、林業経営に適した森林とそうでない森林を区分し、それぞれに応じた森林整備を進める必要があります。

▽森林ゾーニング
森林の様々な機能を十分に発揮するための森林区分です。地域の森林の利用実態に合うよう「木材の持続的な生産を重視する森林」「公益的な機能を重視した森林」に区分し、森林管理を進めていきます。

▽森林の境界が分かりません
本町森林所有者は小規模・分散しています。このため、森林整備の実施に当たっては、効率化を図るため隣接する複数の森林所有者が所有する森林を取りまとめて、一体的に施業を実施する「施業の集約化」を進める必要があります。しかし、森林所有者の経営への関心の薄れ、不在村化や世代交代により、所有者や境界が不明となり、所有者から施業実施の同意を取ることが困難になり、森林整備の妨げになっています。
昨年度実施した町民アンケートにおいても、所有森林の境界が「わからない」との回答が43・7%「大体わかる、近親者ならわかる」が44・1%との結果です。また、所有する森林の今後の手入れについても「手入れをするつもりはない」が39・5%、「考えたことがない」が26・0%の結果で、森林への関心の薄さが伺えます。過疎化が進む本町の森林管理において、森林境界の明確化は喫緊の課題です。

▽森林の価値を広げる
本町豊富な森林資源には様々な価値や事業の可能性があります。
未利用材のバイオマス利用、きのこやジビエなどの林産副産物による収入の向上や、健康・観光・教育など様々な分野で森林空間を活用する「森林サービス産業」の創出等、森林資源の発掘と付加価値の向上が必要です。
何より、町民の皆さんが、森林を守り、育て、活かすことで次世代につなぐ取組が大切です。

▽町民アンケートの結果(抜粋)
問23:森林に期待する役割について
町内の森林に期待する役割として回答が様々分かれましたが、災害を防いだり守ったりする役割を期待する回答が多くありました。