文化 野草散歩(177)

■コナギ(ミズアオイ科)
コナギは水田などで見かけるミズアオイ科の水生植物です。田んぼや沼地などでつややかなハート形の葉を広げているコナギ。青紫色の花が水の中から顔を覗かせているそばで、アメンボなどがすいすいと水面を横切っていく。そんなのどかなひと時が思い浮かぶコナギです。原産地は東南アジアで、日本へは稲作と同時に移入してきたと考えられているそうで、名前も小菜葱、子菜葱、ツバキバ、ハート草など様々な名前で呼ばれていたようです。繁殖力が旺盛で、一年草と言いながら、種の数は一株で数千粒もあるといわれ、かわいい水生植物ながら、稲作にとっては害となる植物なので、古くからコナギを除草することは重要な課題だったようです。
コナギは高さ15cm、茎は根元から分枝し、葉は長い柄があり、葉の基部はハート形に窪み、光沢がある草質は柔らかです。葉身は長さ1.5~6cm、幅は0.7~4cm、葉鞘(ようしょう)から短い花茎が伸びていますが、花茎は短く花が葉の高さを超えることはありません。花序には2~8個の花がつきます。花は直径1.5~2cmですが、植物にも様々な特徴があるもので、コナギの雄しべは6本で、内5本が短くて黄色、あと1本が長くて青紫色とのことで、今回調べてみてそんな特性を持った訳は何なのかな、と印象に残りました。
もう一つ、水田雑草の中でもなかなか根絶やしできない難儀なコナギですが、古くから食用に利用されていたとのことで、葉を茹でて食べていたことから、菜葱(なぎ)という名が付いたとも記されています。シャキシャキとした歯ごたえがありそうな、一度試してみたい野草です。

文・写真 中澤博子さん