講座 新温泉町文化会館だより

■『人権の歴史』をテーマに「第2回人権講座」を開催しました。
文化会館では、同和問題をはじめ、あらゆる差別や人権侵害をなくし、お互いの人権を大切にしあうまちづくりを目指して、年5回の人権講座を実施しています。今年度2回目の人権講座を7月23日(水)に実施しました。

▽DVD「差別のない社会へ~私たちはどう生きるか~」を視聴
今回は『人権の歴史』をテーマにしたDVD「差別のない社会へ~私たちはどう生きるか~」を視聴し、人権啓発指導員の田中千尋さん(浜坂中学校長)の講話で学習を深めました。
小・中・高等学校の教科書には、2000年代の初めまでに大きな変化が起こりました。人権の歴史では、部落問題に関する記述が大幅に増加し内容も豊かになってきました。
また、歴史の教科書の最後には、現代の様々な課題が取り上げられています。例えば、環境問題などに加えて人権課題がいくつも取り上げられています。
これらの人権課題を、私たちがこれからどう解決していくかについて作成されたこのDVDの中心場面は、「部落」「障がい者」「在日外国人」「定住外国人」の4人の当事者の発言で構成されています。取り上げた課題は少ないですが、人権課題全体へ発展させることができる内容となっています。

▽田中千尋さん(人権啓発指導員)の講話
今日の学習のテーマは「人権の歴史」です。
私たちはなぜ歴史を学ぶのでしょうか。
それは、私たちの未来を考えるために歴史が必要とされているからです。社会の中の問題を解決するために歴史が役に立ちます。歴史は、人々が過去にどのようにして課題を克服しようとしたのかを教えてくれるからです。より良い社会を創り出そうとする人々の姿に学ぶことで、私たちはより平和で豊かな社会を追い求めることができるのです。(中学校教科書『新しい社会歴史』より)
現在の中学校社会科教科書は、人権の歴史や部落問題に関する記述が大幅に増加し内容も豊かになっています。
特に、社会と被差別身分の人たちとの関係を多く取り上げるようになりました。
中世河原者の庭造りや江戸時代の身分制度、渋染一揆、解体新書、解放令、水平社、戦後の同和施策などです。教科書の記述内容を紹介します。
『部落差別とは被差別部落の出身者に対する差別のことで、この問題は同和問題ともいわれています。江戸時代に差別されていた「えた身分」「ひにん身分」は明治時代に「賤称廃止令」(いわゆる「解放令」)によって廃止されました。しかし、その後も就職や教育、結婚などの面で差別は続きました』
『これに対して、差別を打ち破ろうとする部落解放運動が起こり、1922(大正11)年には全国水平社が結成されました。1965(昭和40)年に同和対策審議会が出した答申は、部落差別の撤廃は国の責務であり国民の課題であると宣言しました。これに基づいて法律が整備され、対象地域の人々の生活を改善する同和対策事業や差別をなくす啓発活動が推進されてきました』
『しかし、今なお差別は解消されておらず、2016(平成28)年には、部落差別解消推進法が制定されました。今なお就職や結婚などの差別やインターネット上の差別的な表現もみられます』などです。
また、部落差別以外の人権課題についても、女性、障がい者、外国人、アイヌ、在日韓国・朝鮮人、在日外国人、ハンセン病、性的指向や性自認、エイズ患者、HIV感染者など各教科書会社によって重点を置く課題は違っていても様々な人権課題を取り上げて詳述しています。
それでは、差別を禁ずる法律はあるのでしょうか。日本国憲法では、第11条で「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利」であることを規定した上で、第13条で「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」の尊重をうたっています。第14条では「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」と「法の下の平等」を定めています。この14条の『社会的身分』こそが、実は単なる身分的地位ではなく「部落差別」そのものを指しているのです。部落差別は決して許されないということです。
差別をなくするために行われている国内外での法律や取組には様々なものがあります。
人種差別撤廃条約、SDGsの取組、BLM運動やLGBTQの人々を支援する動き、ヘイトスピーチ解消法、部落差別解消推進法、アイヌ民族支援法などがあります。
部落差別解消推進法の第1条には『この法律は、現在もなお部落差別が存在するとともに、…すべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり、部落差別は許されないものであるとの認識のもとに、これを解消することが重要な課題である…』と記述されています。
差別解消に向けて、私たち一人ひとりは何をすればよいのでしょう。
(1)差別があることに気づく
(2)自分の言動が差別でないか考える
(3)差別される人たちでなく、差別する側が考える
(4)勇気をもって差別はおかしいという
(5)人を差別するのではなく尊敬する
(6)自分の身の回りから差別をなくそうと行動する
ことではないでしょうか。

問合せ:新温泉町文化会館
【電話】82-3328