- 発行日 :
- 自治体名 : 兵庫県新温泉町
- 広報紙名 : 広報しんおんせん 令和7年11月号 vol.242
■ハキダメギク(キク科)
植物の名前について、「他に可愛い名前がなかったのかな」と思うことがあります。この小さなハキダメギク(掃溜菊)も、見かけるたび、「可愛い花なのにどうして?」「誰が付けたの?」と思っていましたが、先日調べてみると、命名者はあの有名な牧野富太郎博士でした。
ハキダメギクは熱帯アメリカ原産の帰化植物で、大正時代、東京の世田谷で牧野博士が発見、生えていた場所が掃溜(はきだ)めであったことから命名されたということです。大正時代の都会ではそういう所が植物の育つ環境であったようですが、わが町の周辺では、山道の道端などで見かけます。草の高さは10~40cm程、葉は対生して卵型、またはそれを長くした形状の広披針形~披針形。茎や葉には白い毛が密生しており、枝先に直径5mmほどの小さな花を咲かせます。花は多くの黄色い筒状花(とうじょうか)の周りを、先が3裂した白い舌状花(ぜつじょうか)5枚が囲んでいるというキク科特有の形状になっています。特性は1年草あるいは2年草となっていますが、年に数回発芽して開花を繰り返すようです。発見時にはすでにコゴメギク(小米菊)という同じく外来の似た花があったそうで、こちらは白い舌状花がより小さく、冠毛(かんもう)がほとんど無いということです。冠毛とは種(たね)の上部についた毛のことで、風に乗って飛散するのに役立っています。どちらにしてもルーペで見ないと分からない微細な花ですが、印象的な名前なので、一度で覚えてしまいました。さすが牧野博士。植物にとっては関わりのない事ですが、我々にとっては覚えやすい名前が一番です。ただ、某図鑑にはこの花は運悪く掃溜めで牧野博士と出会ってしまった、と記されていました。
文・写真 中澤博子さん
