文化 六時(ろくじ)の鐘(かね)

日本仏教の聖地「金剛峯寺」のお坊さんのおはなし

金剛峯寺正門を出て門前から西を望むと、高い石垣の上に堂々と建つ鐘楼(しょうろう)が目に入ります。これが高野山名所の「六時の鐘」です。町民の皆さまにとっては、おなじみの存在で、その清らかな梵鐘の音色は、山内に時を告げる役割を果たしています。
この鐘楼は、1618年(元和4年)、豊臣秀吉の家臣であり親戚であった福島正則が母の菩提を弔うために建立したのがはじまりです。その後、1680年(寛永7年)に一度焼失しましたが、息子の福島正利が父の志を継いで再鋳(さいちゅう)しました。現在の姿は1835年(天保6年)に再建されたもので、令和6年からは重要文化財と並び、保護すべき歴史的建造物として大切に守られています。
鐘は朝6時から夜10時まで、2時間ごとに撞かれます。山内に響く鐘の音が時を知らせることから「六時の鐘」と呼ばれるようになりました。
鐘の銘文(めいぶん)は仮名(かな)まじりという珍しい形式で、「これを打てば、一切の悪道頓に停止を得、是を聞けば、十万の聖衆共同を利す云々」と記されています。
さらに、「福島宰相日翁正印大居士在世の時、洪鐘を鋳て万世に残す。寛永七年災にかかる。孝子市丞正利こころざしをつぐ、寛永十二年」という文字も刻まれています。
「六時の鐘」周辺の道は、多くの方が日常的に通る場所です。そこに建物があることを知っているだけでなく、建立の由来を知れば、きっと鐘楼への見方も変わることと存じます。

問合せ:高野山真言宗 総本山 金剛峯寺
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