しごと しもまちキラリ

■豊北町田耕 朝生地区
農林水産省が実施する鳥獣対策優良活動表彰で、令和6年度、最高賞である農林水産大臣賞を受賞。

●よく分からないがやってみよう
▽野生獣による農作物被害への有効な対策
全国的な問題となっている野生獣による農作物被害。作物への被害のみならず、農業を続ける気持ちを失わせてしまうこともあり、影響は深刻です。これら野生獣による被害への対策は、農地をフェンスなどで守る「防護」、猟友会などによる「捕獲」に加え、「生息地管理」が重要と言われています。
「生息地管理」とは、草や木の茂みなど、野生獣が潜む場所をなくすことで、人里に現れにくくすることですが、集落全体で取り組まなければ効果が表れにくく、実施されることが少ないのが現状です。これに、地域ぐるみでしっかりと取り組み、国から表彰されたのが今回紹介する「朝生地区」です。

▽取り組みを始めたきっかけ
令和2年春、県と市の有害鳥獣対策担当者が「地域ぐるみで被害対策に取り組んでくれる集落を探そう」という意見で一致し、農地や山林の地形などの調査を始めます。その結果「朝生地区」が対策の効果が表れやすい地区であると判断され、「集落ぐるみで鳥獣害対策を始めてみませんか」と声を掛けました。
県と市の担当者から突然の提案を受けた地元の役員たちは、住民全員を対象とした説明会を開くなど検討を重ね、最終的には実施を決断することになります。その時の様子を農事組合法人代表の田中信義さんはこう語ります。「その頃、野生獣による被害が見過ごせなくなって、何かしなければと考えていたところだったので、タイミングの良い提案でした。自分が自治会長をやっていたので、みんなで取り組もうと声を掛けて協力を得ました。ただ、その時はみんな、何をするのかよく分からないというのが本音でしたね」

▽次世代に引き継げるように
「朝生地区」の対策の特徴は、「生息地管理」に力を入れたことです。特に、人里に面した広葉樹林や竹林を一定の幅で伐採したのは、見通しが良くなっただけでなく、椎の実やタケノコなど野生獣の餌になるものもなくすことになり効果が大きかったと言います。
また、「山口型放牧」という、県から牛をレンタルし、その牛に耕作放棄地などの雑草を食べさせる、といった山口県独自の取り組みにも挑戦しました。こういった取り組みも地域ぐるみで協力し合えたからできたことです。
また、活動状況を住民に知らせるため「朝生猪鹿通信」というチラシを発行したり、住民を集めての成果報告会などを開催したりしました。
こういった活動が実を結び、農作物被害額は令和元年度と令和6年度との比較で半分以下まで減少しました。
活動を支援する山口県下関農林事務所の岡田浩司さんはこう語ります。「この取り組みは、地域ぐるみで農地を守り、活気あるふるさとを次世代に引き継ぐことにつながります。ほかの地域にも広がっていってほしいですね」

・集落環境調査図の作成
一番初めの作業。集落全域を点検し対策が不十分な点を明らかにします。

・防護柵の点検補修
年に2回、すべての防護柵の点検補修を行って、良好な状態を保ちます。

・山口型放牧
耕作放棄地などの雑草を牛に食べてもらって除草。