くらし リノベーションまちづくり2.0(2)

■PROJECT.1 TAKI:BASE119
昨年の市報11月号で紹介した旧教職員住宅のリノベに続く、市の遊休不動産の活用事例。地域外からやって来たリノベ建築家チームが築いたものは、建物だけではありませんでした。

▽プロジェクトのきっかけは?
増田:豊北町での低未利用の公共施設の活用について相談を頂いたのが始まりでしたね。まず状態が良かった旧教職員住宅から始めて、その効果を点から面へ広げるために、続いてこの旧消防署待機宿舎に取り掛かりました。

岡戸:沖縄は台風やシロアリ対策で、鉄筋コンクリート造の建物が多いんです。鉄筋コンクリート造のリノベーションには特別な技術が必要。一緒に工事をした地域の工務店さんから、勉強になったと言ってもらえてうれしかったです。

▽工事はいかがでしたか?
高藤:既存のものを活かしてなるべくコストをかけずに工夫する、それを公共工事でやるというのが新鮮でした。ネガティブに思われていたものを、どうポジティブに変えられるか。下地に使われていた廃材をウッドフェンスに使ったり、木を組むために掘られた穴をプランターカバーの模様にしたり。

岡戸:地域の方との交流も楽しかったです。スタッフにジャンベ(※)奏者がいるのですが、ジャンベの音が聞こえたのがきっかけで、工事に興味を持ってくれた方もいらっしゃいました。完成するまでの過程の段階で地域の方とつながれたことがうれしかったです。次は、個人の大工さんや、建築を志す若者とも出会いたい。もっと大きな音を出していきましょうか(笑)

増田:1泊の旅行から単身赴任、家族での定住など、滞在期間に合わせて使ってほしいです。利用者にとって、きっかけになりやすいところから、まちに関わってもらえたらうれしいです。

※ジャンベ…西アフリカの伝統的な太鼓
リノベーションは過去と未来をつなぐコミュニケーション。解体したものを残し、新しい人が訪れる。生物が持つ本能「自分たちが住む場所は自分たちの手で作る」この行為を一緒に楽しんでみませんか?

・らいおん建築事務所 増田理沙さん
空き家や使われていない不動産の再生や、建築プロジェクトの企画や設計、進行管理など、幅広くまちづくりに取り組む建築事務所。設計や発注、アドバイザリー業務などを担当する。

・kapok 岡戸大和さん
沖縄市のコザを拠点とするリノベーションに特化した建築会社。3年間で200m圏内を30軒手掛けるなど、エリアの魅力向上にも大きく貢献。

・令和建設 高藤宏夫さん
鳥取市の浜村温泉を拠点に、これからの職人の働き方を模索し、地方でいかにサバイブするかを仲間と共に考え実践。目に入るすべてのものが素材に見える。

■PROJECT.2 シェア農園
続いて、相続人がおらず国が管理することになった斜面地の土地。家も建てられない、車も入れない、草刈りなどの維持費がかかるばかり。この空間…どう活かす?

▽最初の一歩を踏み出したのは?
橋本:日ごろから路地を歩く中で、国有地と書かれた看板が立っている空き地があるなと気になっていました。今年5月、下関と同じく斜面地が多い長崎市に視察に行って、そこで見たシェア農園の土地が、なんと国有地で。

村上:橋本さんから、活用したい土地があると相談を受け、土地の管理者である中国財務局下関出張所に電話をしたところ、思いがけない展開が待っていました。

藤原:私たちも長崎市に視察に行っていて、ワーキンググループを立ち上げ、斜面地の活用方法を模索していたところだったのです。このプロジェクトを一緒に進めていきたいと思いました。

▽地域のためにどう活用を?
橋本:水が要らない手軽な農法を久芳さんがアドバイスしてくれるので、地域外の方にも使ってもらいたいです。ただ農園として使うだけではなく、地域につながりができたらいいなと思っています。私が小さい頃は、何気ないおしゃべりとか、顔の見えるつながりがありました。ここがきっかけで、そうなっていくとうれしいです。

藤原:商業地だと人が呼び込めて収益化も見込めて、事業者としてもやりやすさがあると思います。このような狭い住宅地で挑戦するのは、すごいなと感心します。

橋本:私は逆に魅力を感じますね。この取り組みをしたことで、私もやりたい、という人が現れてくれたらうれしい。小さな輪が広がっていくといいなと思います。

大手企業では手が届きにくい小さな住宅地。だからこそ、マイクロディベロッパーとして価値を生み出す、そんな挑戦をしていきたい。

・ARCH 橋本千嘉子さん
2024年3月、22年間務めた家業の不動産会社より独立して起業。「歩きたくなる街」を意識して、不動産の力で人に明かりを灯すべく活動する。

問合先:共創イノベーション課
【電話】231-5838