くらし もしものときに備えて「人生会議」してみませんか

誰もが命にかかわる大きな病気やケガをする可能性があります。
そのようなときに備え、どのような医療や介護を受けたいかを考えて大切な人と共有する「人生会議」を行いましょう。

■人生会議とは
人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)とは、自分が大事にしていることや望んでいること、どこで、どのような医療や介護を受けたいかなどを自分で事前に考え、周囲の信頼する人たちと繰り返し話しあい共有しておくことを言います。

■もしものときのために
大きな病気やケガで命の危険が迫った状態になると、約70%の人が医療や介護などを自分で決めたり、望みを人に伝えたりすることができなくなると言われています。自分や家族がそのような状況になったときのため、価値観や希望を共有しておきましょう。そうすることで、医療や介護を選択しなければならない選択者の心の負担を軽減することにつながります。この機会に人生会議を行い、自分や家族の望む生き方について考えてみませんか。

■人生会議はどのように進めるの?
人生会議は4つのステップで行います。このステップを何度も行い、あなたの思いを家族や大切な人のほか、医師やケアマネジャーなどに伝えましょう。

ステップ1 考えてみる(1)
あなたがどんなことを大切にしているか、どんな医療や介護を受けたいかなどを考えてみましょう。

ステップ2 考えてみる(2)
もしものときに、あなたの思いを伝えてくれる「信頼できる人」は誰か考えてみましょう。

ステップ3 信頼できる人に話をする
(2)で考えた「信頼できる人」と希望する生活について話しあいましょう。

ステップ4 共有して書き残す
考えたことや話しあったことを書き残して、信頼できる人たちと共有しておきましょう。

健康状態や環境などで考えは変わります。
何度でも繰り返し考え、話しあいましょう。

■「人生会議ノート」を活用しましょう
市では人生会議ノートを作成しました。このノートには、これからの過ごし方や病気にかかったときの医療や介護などの話しあいの方法が記されており、自分の希望などを書き残すことができます。市ホームページから印刷できますので、ぜひ活用してください。

配布場所:高齢者支援課
作成:高齢者支援課、やない~ねットワーク(市内の医療・介護・行政で構成されたネットワーク)

■最期のときを後悔なく迎えるために
1年ほど前、最愛の夫を在宅で看取(みと)った市内在住のAさん。
在宅で看取ると決めた経緯や看取った後の思いをお話していただきました。

◇急な告知を受けて
あるとき、夫が背中が痛いと言い始め、かかりつけ医に相談しました。すると総合病院を紹介され、受診したその日に末期のすい臓がんと告知を受けました。夫は余命がどれくらいなのかを気にかけていました。もともと夫は大工として働いており、息子に家を建ててやりたいという思いを持っていましたが、医師からそれは難しいと告げられました。

◇日ごろから会話の中で
私は看護師として働いていました。その経験から日常会話の中で夫と「最期はどうしたい?」と話をしていました。夫は「治療はしない」「家で過ごしたい」と話していました。
告知を受け、夫は改めて「治療はしない」と決断しました。「お世話になります」という夫の一言で、私は在宅で看取る覚悟を決めました。子どもたちに報告すると、協力するよと言ってくれました。
告知を受けると同時に、在宅で医療や介護が受けられるようケアマネジャーを紹介されました。訪問看護、訪問介護、福祉用具の調整などをしてもらい、さらに在宅医の協力を得て在宅医療介護チームが動きだしました。

◇家族で取り組んだ在宅療養
在宅で看病するなか、支えとなったのは子どもたちの存在でした。夫は病状が進行すると、夜間に落ち着きがなくなり、興奮した状態になることが多くなりました。そのときは私だけの負担にならないよう、子どもが交代で看病してくれました。遠方で暮らす子どもはテレビ電話で夫を励ましてくれました。夫の兄妹も家を訪ねては夫にたくさんの言葉をかけてくれました。
しかし日々の介護で疲れがたまっていたのか、しばらくすると私も子どもも体調を崩してしまいました。在宅チームの皆さんの調整により、在宅医から夫の一時入院の許可をいただきました。私たちはしっかり休息できたおかげで体調が回復し、改めて夫を自宅で受け入れることができました。

◇最期は家族、愛犬とともに
入院から帰ってくると、さらに病状が進んでいきました。最期は子ども、孫、愛犬、そして私が見守る中、旅立っていきました。
夫の思いとその思いを叶えたい私の気持ちを理解してくれた家族と一緒に最期を迎えられたことは、「幸せ」の一言に尽きます。もちろん別れは辛いものですが、最期を看取ることができたという達成感があり、悔いはありません。最近は子どもが作ってくれた夫の生前の様子をまとめた動画を見て、夫を思い出しながら毎日を過ごしています。

◇望んだ形で夫を看取って
私たちは何気ない会話の中でどのように最期を迎えるか話をしてきました。そのため在宅医や看護師、ヘルパーの皆さんの力を借りながら、在宅という夫の望みを家族で叶えることができました。
実際にいざというときに直面すると、最期をどう過ごしたいか改めて考える余裕はありませんでした。普段から最期の迎え方を話しあっておくことが大切だと感じました。

家族や大切な人と、最期の迎え方の話をするのは「縁起でもないこと」と敬遠されがちですが、とても重要なことです。誰にでも起こり得る「もしものとき」に備えて、あなたの望む生き方、それを支える医療や介護について、人生会議を通して考えてみませんか。

問い合わせ:高齢者支援課
【電話】22-2111内線156