- 発行日 :
- 自治体名 : 愛媛県上島町
- 広報紙名 : 広報かみじま 2025年7月号
■アボカドの栽培について
アボカドは、中央アメリカやメキシコが原産のクスノキ科ワニナシ属の常緑高木の果樹です。日本では西暦2000年頃から輸入量が爆発的に増え、スーパー等でも見かけるようになりました。最近、国内でも栽培され始めましたが、店頭で売られている果実のほとんどは輸入果実で、国内産はまだまだ希少な果実です。
今回はアボカドという果樹について解説します。
[1]アボカドの特性
アボカドは亜熱帯の中央アメリカが原産地のため低温に弱く、日本では栽培適地が限られます。愛媛県内では松山市周辺や宇和島市、愛南町などの沿岸地域で栽培が見られます。レモンが低温障害を受けない地域であれば栽培は可能と考えられ、上島町においてもマイナス5℃程度までは耐えるような耐寒性品種を利用し、苗から若木(幼木)の数年間を防寒して乗り切れば栽培が可能です。また、花の習性がカンキツ類と異なり雌雄異熟性(しゆういじゅくせい)という開花習性(ひとつの花に雄しべと雌しべを有するが成熟が午前と午後になり自家受粉できない、表1参照)のためタイプの異なる品種を混植しないと受粉・結実をしません。
結実割合を高めるためにはAタイプとBタイプの混植が必要となります(品種のタイプは表2参照)。
▽表1 アボカドのタイプ別開花スケジュール
▽表2 アボカドの主要な品種と特性
店先に並ぶアボカドの多くはハスという品種で、中心の種を取り出して発芽させて育てることも可能です。ただし、この品種だけでは結実しにくく、耐寒性が弱いためマイナス温度に長時間さらされると枯死します。また、日本では果実の成熟までに寒くなるため果実が成熟しにくいと言われています。アボカドは固い果実を収穫して追熟します。収穫時は緑色の果実ですがハスは追熟すると果皮が黒くなるため可食時期が判断できますが、ピンカートンという品種は果皮が緑のまま変色しないものもあります。果実がつけば見っけもんですが、樹齢が経過しないと花は咲けどもなかなか実がつかないのが実情です。
[2]栽培上の注意
栽培には低温になりにくい場所に植えることが重要です。土壌はカンキツ類と同様と考えてよいですが、高木になるため強風で倒木するリスクがあるので家屋の近くでの植え付けには注意が必要です。アボカドは結実率が非常に低い果樹(結実しても収穫まで大きくなる確率が低い)のため収穫量の見込みが立てにくいので粗放的な栽培により大きな期待を持たずに取り組むことも必要と思われます。ただし、原産地と気象条件や周囲の環境が異なり不意な病害虫の被害が発生することもあるようです。増殖は活着率が低いですが挿し木や接ぎ木(緑枝接ぎ)が可能です。
[3]最後に
地球温暖化と言われ始めて久しいですが、将来、気温上昇によりカンキツの栽培適地が北上すると唱える研究者も多くいます。いずれ上島町でも熱帯果樹が栽培できる時代が来るかもしれません。アボカドは好き嫌いはあれ、日本の食卓に定着している果物として国内生産の市場価値はあると思います。耕作放棄地対策として植栽して見るのも面白いと思いますが、苗木は購入すると意外と高価なので興味本位なら趣味として始めるのもよいと思います。