- 発行日 :
- 自治体名 : 愛媛県内子町
- 広報紙名 : 広報uchiko 2025年3月号
■第二部 講演
愛媛大学学長特別補佐 未来価値創造機構副機構長 教授 井口梓(あずさ)さん
◆歴史にのぞみ、未来をひらくまちづくりを目指して第3期内子町総合計画の策定に関わらせてもらいました。一町民の気持ちで、まちづくりの指針となる計画の、私なりの解釈を伝えたいと思います
◇目指す将来像
本計画で内子町が目指す将来像は「町並み、村並み、山並みが美しい持続的に発展するまち」。平成17年の合併時から掲げ続けた、住民にはなじみの言葉ですが、外から見ればこれほど心に響く言葉はありません。「町並み、村並み、山並み」とは、暮らしと産業が連なり作り出す景色。「美しい」とは、好ましさや誇りであり、私たちのアイデンティティです。人々が生きた証である文化を大切にし、残していくという町の姿勢と住民の願いが、この将来像に込められています。
土地の資源を生かした手漉(す)き和紙や酒などの産物、暮らしから育まれる祭礼・神事・民俗風習、田畑を耕し農作物を植え五穀豊穣を祝った生業――。そのような営みが、美しい景観を形作ってきました。手間がかかるからこそ、そこに郷土愛が生まれます。愛情を持って誰かがバトンタッチしてくれたおかげで、今も続いているのです。
◇「歴史にのぞみ、未来をひらく」
シンポジウムのテーマ「歴史にのぞみ、未来をひらく」は、私たちがどうあるべきかという行動理念です。歴史とは、先人たちが今の内子町を形作ってきた行動の積み重ねであり、懸命に生きてきた証。「のぞむ」には、(1)敬意を表して振り返る「望む」、(2)向き合い、時に挑戦する「臨む」、(3)未来への道しるべを見いだす「希む」――の3つの意味が込められています。内子町の歴史は、多くの町民が誇る、受け継ぐべきまちづくりの根幹。幅広い世代がそれぞれ考え、工夫し、追求し続ける姿勢が必要です。
「未来をひらく」という言葉には、未来に向けてこれまでのまちづくりの質をさらに高め、切り拓いていくという思いが込められています。多様な人々が協力し、柔軟に可能性を広げ、世界に視野を向け、挑戦し続けること。私たちがアクションを起こすことが未来を守り、選択肢を残すことにつながるはずです。
◇小さくても輝く「縮充社会」へ
人口減少は避けられない課題です。同計画で内子町は2045年時点で人口1万人を目指すとし、「地域の担い手が支え合うことで、豊かな暮らしや地域活動の維持の可能性が高まる」と書いています。人口が減少する中でも幸福で充実した社会を「縮充社会」といいます。縮小をただ悲観するのではなく、充実した社会を目指し地域を継続できる仕組みを考えることが大切です。人口が増える時代とは違う価値が必ずあるはず。何が幸せか、その地域のものさしを作る必要性があります。
トークセッションで皆さんが語り合う姿に感動しました。「内子らしさ」とは何か、地域の魅力を語り合い実感することが、歴史を受け継ぐ力になります。高齢者は若い世代にまちの本当の魅力を伝え、子どもは大人たちにここで頑張る原動力をくれる――どの世代も社会を守る存在です。みんなが活躍し、笑い合えるまちを目指しましょう。
◇地域の意志というバトン
先人たちが築いた「文化」は、まちの歴史を表し、ずっと残り刻まれていくもの。町外にいる人にもふるさとを忘れさせない、大きな力を持ちます。いつか皆さんも先人として振り返られる日が必ずやってきます。「地域の意志」というバトンを私たちは握っていて、いつか誰かに渡していくのです。
合併20周年はターニングポイント。総合計画に基づく行動は、このまちで私たちが幸せに生きていくための大きな種まきです。内子町にしかできないまちの追求が続いていくよう、「歴史にのぞみ、未来をひらく」という言葉に、願いを込めたいと思います。
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