文化 人権学習シリーズ 390

■人権に関する用語の基礎知識 「識字」(しきじ)「夜間中学」(やかんちゅうがく)
文字の読み書きや日常で使う簡単な文章を理解する能力を「識字」と言います。そして、読み書きができる人の割合を「識字率」と呼びます。現在の日本の識字率は、ほぼ100%だと言われていますが、様々な事情で読み書きができない人も存在しています。
先日、『35年目のラブレター』という題名の映画が封切られました。マスコミでも取り上げられた話題作だったので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。この映画は、ある実話に基づいて制作されたものです。
主人公の男性は、貧しさから十分な教育を受けることができず、読み書きができないまま大人になります。そして、35歳の時に結婚し、家族のために、寿司職人として懸命に働きます。彼には、字の読み書きを身に付ける時間もありませんでした。
結婚後しばらくして、字の読み書きができないことを妻に打ち明けます。すると妻は、「今日から、私があなたの手になる。」と言って、そのことを馬鹿にすることなく、勤勉な夫を尊敬し、支え続けてくれたのです。
そして、定年退職を迎えた65歳の時、「夜間中学」へ通う決心をし、その門をくぐります。「文字で自分を支え続けてくれた最愛の妻へ文字で感謝を伝えたい。妻にラブレターを書きたい。」というその一心で。そうして、字を学び始めて7年後のクリスマスの日に、やっとラブレターを渡すことができたのです。
市町村や都道府県が設置する中学校において、夜の時間帯に授業が行われる公立中学校のことを「夜間中学」と呼びます。義務教育を十分に受けられなかった方々や外国の方々の学びの場として、国内には、現在62校の夜間中学が設置されています。愛媛県にはまだ設置されていませんが、文部科学省は、映画『35年目のラブレター』とタイアップしながら、その設置を積極的に推進しています。