くらし [同和問題啓発強調月間 特集]今こそ、改めて考えよう。(1)

同和対策審議会答申から60年 今こそ、改めて考えよう。

2025(令和7)年は「同和対策審議会答申」が出されてから60年を迎える節目の年。この答申は、国が「部落差別問題の解決を国策として取り組む」ことを初めて確認した歴史的文書です。これ以降、社会や人の意識がどのように変わってきたのか、そして、60年たってもなお不断の努力が必要とされる今、私たちは何を学び、どう行動すべきなのか、改めて考えてみましょう。

■[Point]同和対策審議会答申の大切なポイント
部落差別問題(同和問題)の解決に向け、国は1960(昭和35)年「同和対策審議会設置法」に基づき、1961(昭和36)年同和対策審議会を設置し、部落差別問題(同和問題)を解決するための方策についての意見を求めました。その後、1965(昭和40)年に同審議会は国に対して審議の結果を答申しました。

◇[Point.1]国の責務 国民的課題
「早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題である」とし、国・自治体と国民の両輪が努力して取り組むことの必要性を説いた。

◇[Point.2]差別する側の問題 過去の問題ではない
部落差別の問題は「差別する側の問題である」とし、過去の問題ではなく、部落差別は今もある問題であるとして警鐘を鳴らした。

◇[Point.3]寝た子は「正しく起こす」
放置しておけば部落差別はなくなる「寝た子を起こすな」の考えを否定。何も知らないと無自覚な差別につながるため、正しい知識と理解で寝た子は「正しく起こす」ことを訴えた。

◇[Point.4]越えがたい壁「結婚差別」
親や親戚が結婚相手の身元を調査し、被差別部落出身である場合に反対する。こうした根強い差別意識の存在を示し「結婚差別は部落差別の最後の越えがたい壁」と訴えた。

■答申を受け、歴史が動く
33年にわたる「同和対策事業」が社会と人の意識を変えた

1965(昭和40)年 同和対策審議会答申
1969(昭和44)年 同和対策事業特別措置法制定
1982(昭和57)年 地域改善対策特別措置法制定
1987(昭和62)年 地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律制定
※2002(平成14)年3月失効
1996(平成8)年5月 地域改善対策協議会意見具申
POINT
・すべての人権問題の解決は国際的責務
・これまでの取り組みの成果を踏まえ、すべての人の人権を尊重するための教育・啓発を構築
1996(平成8)年12月 人権擁護施策推進法制定
1997(平成9)年3月 人権擁護推進審議会設置
1999(平成11)年7月 人権擁護推進審議会答申(1号答申 人権教育・啓発の基本的事項)
2000(平成12)年12月 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(恒久法)
2016(平成28)年12月 部落差別の解消の推進に関する法律
2019(平成31)年3月 部落差別の解消の推進に関する条例(福岡県)
2019(平成31)年4月 部落差別の解消の推進に関する条例(田川市)

[ハード面]生活環境の改善をはじめとする物的な基盤整備が進み、格差は縮小し、ハード面では一定の成果がありました。
[ソフト面]物的な基盤整備とあわせ、差別意識の解消に向けた人権教育および啓発も図られてきました。