- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県宮若市
- 広報紙名 : 広報みやわか「宮若生活」 No.231 2025年4月号
◆剣道最高位 8段取得 山近 寛人さん
剣道界では「神の領域」と呼ばれる八段。全国に八百二十二人しかおらず、福岡県内には三十一人しかいません。そんな神の領域に諦めず挑戦し続けて、昨年の11月に八段を取得した男性がいます。山近寛人さん六十六歳。どのようにして神の領域までたどり着いたのか、八段への道のりを伺いました。
◇稽古に励んだ十年間
八段の取得には、審査会で七段を取得して、十年経たないと受ける資格がもらえないんですよ。私が七段を取得したのは、三十七歳だったので、それから十年間、八段取得に向け毎日稽古に励みました。そして、四十八歳の時、初めて八段に挑みました。
八段の審査会では、審査員の前で受審者同士が試合形式の実技を行うんです。そこでは理合(りあい)や風格、立ち姿や一本となる有効打の有無を含めて総合的に判断して合否が決まります。初めての審査会は一次審査落ちで、評価は最低評価のCでした。
その後も引き続き、五十歳、五十二歳と試験を受けましたが、二次審査までいけず、アキレス腱(けん)断裂などもあり、八段の夢を諦めていました。
◇八段への道
体調が良くなり、本格的に稽古を再開していくうちに、「やっぱり八段を目指したい」と、強く思うようになりました。そこからは、八段の先生が主催する研修会に積極的に参加したり、インターネットで八段戦や審査会の映像を見たり、自分で『八段への道』という指導や助言、自分で気づいたことをメモしたノートを作り、何回も読み返したりしました。
そして、八段へ挑戦して十八年、九回目の挑戦となった昨年11月の審査会。いつもより気力が充実していているのを感じました。立ち会いでは、相手の懐に入り、捨て身の面と胴が炸裂(さくれつ)。ついに二次審査も合格し、神の領域とも呼ばれる八段を取得できました。
八段へ挑戦する中で、「私が受かるわけない」と、何度も諦めかけました。しかし、地道に稽古を続けることで、八段を取得できたのです。努力は嘘をつかないと言われます。今となっては、諦めなくて良かったと思っています。
八段の取得は、地道な取り組みと諦めない心、そして、ご指導してくださった先生方や家族の支えがあったからこそだと感謝しています。
今後も、桜雲館監督として変わらず子どもたちの指導と、剣道の普及に尽力していきたいです。
・山近 寛人さん〔やまちか ひろと〕
市内剣道クラブ桜雲館監督、水原地区在住。現在66歳。
部活動の顧問として、中学校の剣道部を県大会優勝や全国ベスト8に2回も導く。
八段受審者1,087人中合格者9人という狭き門を突破した八段取得者。