- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県朝倉市
- 広報紙名 : 広報あさくら 第416号(令和7年10月号)
■10月17日~23日は薬と健康の週間
おくすり手帳を1冊に
朝倉薬剤師会 会長 新留(にいどめ)孝一さん
市国民健康保険の令和6年度総医療費は約52億5000万円。うち調剤費は約8億5000万円。薬の使い方を正しく理解し、適正服薬を心がけ、自身の健康増進に努めることが医療費適正化にもつながります。
薬の正しい飲み方や注意すべき点、おくすり手帳やかかりつけ薬局の重要性について、朝倉薬剤師会会長の新留孝一さんに伺いました。
◇服薬方法で気を付ける点は?
複数の薬を使用している場合、飲み合わせが悪いと薬が効きすぎてしまったり、反対に薬の効果が十分に得られなかったりすることがあります。薬との飲み合わせが悪い食品やサプリメントもあります。次のことに注意しましょう。
・すべての薬は、「主作用」と「副作用」を併せ持っています。
・薬は、適切な血中濃度(効き目が表れる範囲)になるように、それぞれ用法・用量が決められています。
・自分に合った薬や量を適正にすることで副作用の危険性を減らすことができます。
・1つずつでは問題ない薬でも、飲み合わせによっては予想できない副作用が出ることもあります。
◇ポリファーマシーになるのはなぜ?
複数の医療機関を受診することにより、処方された薬全体の把握や管理が難しくなることから、それぞれで似た成分の薬を処方されることがあります。
特に高齢者は、生活習慣病などが重なり、必要な服薬が増えて、ポリファーマシー(単に多くの薬を服用しているだけではなく、そのことにより副作用が起こるなどの有害な状態のこと)になりやすい傾向にあります。
75歳以上では、4人に1人が平均7種類以上の薬を服用しています。服用する薬が6種類以上になると、薬が効きすぎてしまったり、反対に薬の効果が十分に得られなかったりすることがあります。
◇薬を減らすことはできますか?
主治医に相談して、1日3回服用の薬を、1日1回や2回服用の製剤に変えることもできます。また、配合錠(2種類以上の薬を配合)にすると、薬の数が減り、薬代が安くなることがあります。
自分の判断で薬を減らしたり、中断したりするのは止めましょう。
◇多剤服用による副作用は?
高齢者に起こりやすい副作用は、ふらつき・転倒・物忘れ・せん妄・抑うつ・食欲低下・便秘・排尿障害などです。特に、ふらつき・転倒は、薬を5種類以上服用している高齢者の4割以上に起きているという報告もあります。
また、高齢者になると骨がもろくなるため、転倒による骨折をきっかけに寝たきりになり、認知症を誘発するおそれがあります。
◇薬が重複しないためには?
「おくすり手帳」を上手く活用してください。次のことが大事なポイントです。
・手帳は医療機関ごとに作成せず、一人1冊にまとめる
・薬服用後の体調変化や一般用医薬品、サプリメントなどのほか、検査値や残薬、処方変更の理由なども記入する
・入院時には、必ず手帳を持参する
・診察時(在宅も同様)は主治医に手帳を見せる
◇リフィル処方箋って何ですか?
症状が安定している患者さんについて、医師が長期処方を可能と判断した場合に発行され、最大3回まで繰り返し利用できる処方箋です。
・1回目は通常通り処方箋発行後4日間、2回目以降は次回調剤予定日の前後7日間に受け取ることができます。
・継続的な薬学的管理指導を受けるために、同一薬局の利用が推奨されています。
・一部の睡眠薬や湿布薬など、投与量に制限があるお薬は対象外です。
メリットとして、通院負担が軽減できます。感染症にかかるリスクも低くなります。
デメリットは、処方箋を自身で保管しておかなければならないこと、診察や検査を受ける機会が減ることです。リフィル処方箋を受け取っていても、症状の変化により、受診をすすめられることもあります。気になる症状があるなど、必要な場合は医師の診察を受けてください。
◇セルフメディケーションとは?
自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当することです。
頭が痛い、お腹が痛い、熱があるなどは日常によく起こる症状ですが、それらの陰に重大な病気が潜んでいることもあります。特に、突然生じた症状や今までに経験のない症状には注意が必要です。OTC医薬品を使用するか、医療機関を受診すべきか、判断に迷うときには、薬剤師がサポートします。
◇「かかりつけ薬局」を選ぶ時のアドバイスをお願いします。
普段から安心して利用できる薬局を、「かかりつけ薬局」として1つ決めておきましょう。あなたが使用する全てのお薬を一つの薬局で管理することで、複数の医療機関から似た成分のお薬や飲み合わせが悪いお薬が処方されることを防ぐことができます。
身近な健康の相談役として、かかりつけ薬局を探してみましょう。また、おくすり相談バッグやおくすり手帳を活用して医療費の適正化にご協力ください。
■マイナンバーカードの健康保険証利用
マイナンバー本人の同意を得たうえで医療機関・薬局が患者の特定健診情報・薬剤情報を閲覧できます。本人が閲覧したい場合、マイナポータルから確認できます。
特定健診情報:40~74歳を対象に、メタボリックシンドロームに着目した健診結果の情報。75歳以上の人は、医師が後期高齢者健診情報を閲覧できます。
薬剤情報:薬の他に注射・点滴、入院中の情報も含みます。(調剤年月日、医薬品名、成分名、用法、用量など)カードの健康保険証利用
■バイオ後続品(バイオシミラー)
微生物など生物の力を利用して作る薬をバイオ医薬品といいます。今までは治療が難しかった病気にも効果が期待される一方で、高度な技術などを用いるため、多くの薬で値段が高くなっています。
バイオ後続品(バイオシミラー)は特許の切れたバイオ医薬品を他の製薬会社が販売する薬のことです。元々の薬の70%の値段で同じように使用でき、経済的負担の軽減が期待されています。
■OTC医薬品
医師の処方箋がなくても薬局などで購入できる市販薬で、要指導医薬品と一般用医薬品の2種類があります。
◇要指導医薬品
医療用からOTC医薬品に変更後、期間が短いものや、劇薬が該当します。購入時には薬剤師の説明が必要です。
◇一般用医薬品
リスクに応じて、第1~3類に分類されます。購入や薬の相談をするときには、薬剤師や登録販売者が対応します。
■セルフメディケーション税制
薬局やドラッグストアなどでセルフメディケーション税制対象医薬品を購入し、世帯での年間購入額が12000円を超えた場合は、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の適用を受けることができます。
領収書は保管しておきましょう。ただし、医療費控除との併用はできません。
問合せ:市保険年金課
【電話】28-7558
