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- 自治体名 : 福岡県芦屋町
- 広報紙名 : 広報あしや 令和7年4月号
新人学芸員が、芦屋町の歴史を基本から探る不定期連載第3回をお届けします。今回から3回にわたり、芦屋の地層と化石について紹介します。
■日本海のはじまりは「芦屋海」
今の日本列島ができる少し前、約3200万年前に今の日本海のもととなる海ができ始めました。この海のことを「芦屋海」といいます。芦屋海の記録は、北部九州から山口県西部に地層として残されていて、この地層のことを「芦屋層群」といいます。芦屋層群には、日本列島ができる前の地球の環境や、日本列島ができるまでの過程を知るための、重要な地質記録が残されています。
■芦屋層群
地上で見られる芦屋層群の地層は4種類あり、当時の波の強さや海の深さによって特徴が違います。4種の地層は次のとおりです。
(1)20mよりも浅い水深で、海面の波の影響を受けて堆積した砂の地層
(2)暴風時の強い波の影響を受けて堆積した砂の地層
(3)海面の波の影響を受けずに堆積した泥の地層
(4)水深80mよりも深い水深の、ほとんど海流もない場所で、波や水の流れとは違った密度流と呼ばれる流れによって堆積した砂の地層
これらの特徴を持った地層により、芦屋層群は構成されています。
■夏井ヶ浜の不整合層
夏井ヶ浜の海岸は、芦屋層群を観察できる場所の一つです。その中に、不整合層と呼ばれる地層があります。不整合層とは、地層の重なりに時間の隙間があったり、地層の連続的記録が失われていたりする地層のことです。
夏井ヶ浜の不整合層は、先述した(4)密度流の地層のすぐ上に(1)浅い水深でできた砂の地層が重なっています。この2つは、水深が深い地層と、水深が浅い地層であり、本来なら少なくとも100mくらいは水深が違うはずの地層が隣り合っています。これは、夏井ヶ浜の不整合層ができたころに、短い期間で急激に海面が下がる大海退が起きたことを示しています。これは、2900万年前の世界的な大海退のことで、地質学の中では大変重要な出来事です。
夏井ヶ浜の不整合層は、以前は誰でも見学できましたが、崩落の危険性が高いことから保護工事が行われ、現在は見ることができません。
次回は、芦屋層群で発見される化石を紹介します。
(芦屋歴史の里)