くらし 【人権教育No.332】ともに生きる

■「小さな攻撃」
人権の学びの中で、マイクロアグレッションという言葉を耳にします。マイクロは「小さな」、アグレッションは「攻撃」という意味で、思い込みや偏見によって、無自覚に相手を傷つけてしまう言動のことをいいます。多くは日常の中の些細な言動であり、「自覚なき差別」とも言われています。
たとえば、母国より日本での生活が長いAさんは、見た目から「日本語上手ですね」「お箸の使い方が上手ですね」などと、未だに言われることがあります。一見誉め言葉のようにも聞こえるのですが、日常的にこうした言葉を投げかけられるAさんにとっては、何かモヤモヤした気持ちや、しんどさがあるようです。
人との関係の中で起こるマイクロアグレッションの特徴は「相手を傷つけるつもりはなかった」という、本人に悪気がないという点です。そのため、不快な思いをした側も指摘しにくい状況があります。
相手を知る上で、会話をしたり、気持ちを伝えたりすることはとても大事なことです。その際に「相手の感情や考えを決めつけてはいないか」「自分の価値観を押しつけてはいないか」「尊厳を傷つける表現になっていないか」「属性にとらわれずにその人自身と向き合っているか」など、自分の言動を一度振り返ってみてはいかがでしょうか。見過ごされやすい、差別意識に気づく感性を磨きたいものです。

社会教育指導員 野中(のなか)