- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県大村市
- 広報紙名 : 広報おおむら 2025年10月号(No.1554)
◆ヘルニアの嵌頓(かんとん)
市立大村市民病院 外科 見陣 冬馬先生
外科で診療する(ことが多い)ヘルニアは、俗に脱腸ということもあります。
しかし、正確には腸だけではなく、臓器や組織が元々ある場所から体のいずれかにある穴を通じて脱出した状態のことをいいます。足の付け根、おへそ、以前の手術の痕が膨らむ鼠径(そけい)、腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアなどは、皆さんもご存じかもしれません。
脱出したものがはまり込んでいなければ(嵌頓しなければ)、脱出したものを戻し、穴を閉鎖・補強する手術で治療をすることができますので、外科にご相談ください。しかし、脱出したものが嵌頓している場合は、急いで治療をする必要がありますので、外科と言わず、できる限り早く病院を受診してください。時間が経てば経つほど、はまり込んだものは戻りにくくなり、戻らなければ緊急手術が必要になってしまいます。さらに腸がはまり込んでいる場合は、腸が腐ってしまうこともあり、腐った腸は切らないといけません。また、戻せたとしても、遅れて腐った腸が破れてしまったり、戻そうとしている途中で腸が破れて腹膜炎を起こしてしまうこともあります。緊急手術というだけで通常手術より危険性は高いですし、腸を切った場合や腹膜炎を起こした場合は、さらに危険性が高くなります。また、腸を切ると化膿する危険性があるため、穴を十分に閉鎖・補強することが難しくなってしまいます。
このように良くないことばかりですので、できれば嵌頓する前に手術を行い、嵌頓してしまった場合はできる限り早く病院を受診しましょう。なお、ずっと前からヘルニアがあったり、ヘルニアが巨大であったりする場合に、嵌頓はしていませんが、常に脱出したままになっていることもあります(非還納性ヘルニア)。嵌頓と判断が難しいため、そうなる前に手術ができればより良いですが、手術が難しい場合やすでにそうなってしまっている場合などは、嵌頓してしまうと腸が閉塞するため、腸閉塞の症状や痛みなどを参考に判断してください。
