文化 わがまち再発見『文化財のみかた』第12回

■版経(はんきょう)のみかた(2)
「経典」というと、単にお経が書かれたものと思いがちですが、それ以外にも様々な情報が記されています。まず表紙には「大般若経巻(だいはんにゃきょうかん)第一」など経典のタイトルである「外題(げだい)」が記されます。表紙をめくって、本文である本紙のはじまりには「首題(しゅだい)」、終わりには「尾題(びだい)」と呼ばれる経典のタイトルが記載されています。「首題」「尾題」の下には、おおよそ10巻ごとに天・地・玄・黄などの漢字が記された「千字文(せんじもん)」が付(ふ)されています。
次に、どの経典の何紙目かを示す「版記(はんき)」が経典の折り目にあります。「首題」と同じ千字文の下に漢数字が2つ記載されており、例えば「天 一 一」は大般若経巻第一の1紙目を示しています。これらの記載から、今、何巻のどこか、現代でいうところの「ページ数」の役割がありました。
最後に経典末尾の「刊記(かんき)」です。ここには版木(はんぎ)を作った経緯や、誰が経典の印刷を注文し、どのように伝来してきたか、といった情報が記載されていることがあります。このように版経は単にお釈迦様の教えが書かれているものではなく、中国や朝鮮半島で版木が作られた場所から、どのようにして経典が印刷され伝来してきたかといった足跡をたどれる、貴重な歴史資料といえます。
次回は西福寺(上対馬町西泊)に伝わる「元版大般若経」を紹介します。

「折本装の構造」
松浦晃佑「版経の調査ってなにするの?」
(『版経東漸~対馬がつなぐ仏の教え~』
九州国立博物館、2019年)19頁から引用
※詳細は本紙PDF版23ページをご覧ください。

「些細なことでもかまいませんので、疑問や質問がありましたらお気軽にお尋ねください。」

問合せ:文化財課
【電話】0920-54-2341
【E-mail】[email protected]