文化 【特集】対馬の資源は誰のもの?(2)

■人々の営みが、対馬の資源をつないできた
豊かな海と深い山に囲まれている対馬では、長い歴史の中で自然を生かす知恵・技術・言い伝えが培われてきました。これまでの暮らしは自然とともにあり、その結びつきが強かったのです。

「白嶽は麓の集落のもんだけやなく、豆酘や阿連、根緒とか海がある町の漁師も正月には登って一年の安全・大漁祈願をしよったとですよ。」
(洲藻地区 60代男性)

「嫁いできた時は、毎月姑さんがお祀りに行くのに龍良山のふもとに車で送ってましたね。あれだけの森が守られたのは、そういう人の祈りがあったからなんでしょうね。」
(内山地区 70代女性)

「白嶽は浅茅湾のどこからでも見えるけ、絶対に迷わん。昔は、白嶽が霧で見えん時は、漁にも出んやったよ。」
(黒瀬地区 70代男性)

「どんだけ田仕事が忙しくても、ヤマネコが田んぼから顔を出したときは、トラクターばバックさせて道を譲ってしまいます。やっぱりヤマネコは佐護の宝ですけんね。」
(佐護地区 60代男性)

「このあたりでは、資源を残すために潜りはせずに、腰の高さまで浸かってのサザエ漁のみを良しとしてきたんです。そのおかげか、今でもこの地域は海の幸が豊富です。」
(千尋藻地区 60代男性)

「小さい頃木庭作※(こばさく)やっとった時は、麦刈りしながら、キジの卵を見つけて、おやつに食べよった。ヤマネコが飛び出していくのもよう見かけたよ。」
(志多留地区 80代女性)
※山の斜面を農地として利用する焼き畑農法

しかし、担い手不足や生活様式の変化などにより、自然との関係性が崩れつつあります。

■観光の力で、資源を後世につなぐ「エコツーリズム」
観光客は、食事や体験、土産物の購入などを通じて、地域経済に大きな力をもたらす存在です。新型コロナウイルスの影響で、対馬を訪れる観光客は一時大きく減少しましたが、近年は回復が進み、令和5年にはおよそ50万人が対馬を訪れるまでになりました。この観光の力を「地域の資源を未来へつなぐ力」として生かすことが必要だと考えられます。観光のあり方をよりよいものに見直し、対馬の魅力を守りながら、新たな価値を創り出していく取り組みの一つとして、エコツーリズムがいま、動き出しています。