くらし 人輝く 人権尊重の都市(まち) やまが「人権啓発便り」第51号

福島 隆(たかし)さん(90)
戦争体験者の高齢化が進む中、その体験した記憶を次の世代へ受け継ぐことは喫緊の課題です。
記憶を風化させることなく、戦争の悲惨さ、平和の尊さを伝えることを目的に自身の体験について講話活動をされている福島隆さんに話を伺いました。

■終戦から抑留 そして帰国
1945年当時、朝鮮半島には約80万人の日本人が住んでおり、私たち家族もその一部でした。戦時下ではあるものの比較的平穏な日々を送っていました。しかし、8月9日にソ連が朝鮮半島北部へ侵攻し、状況が一変。人々は現在の韓国を経由して日本に帰国しようとしましたが、ソ連が北緯38度線を封鎖。逃げ遅れた私たちは収容所での厳しい抑留生活を余儀なくされました。飢えや寒さと闘いながら、家族で38度線突破を決意し、山道や谷川を渡り、ソ連兵に見つからないよう進み続けました。命の危険を感じながら多くの困難を乗り越え、1946年6月4日、ついに日本への帰国を果たしました。当時約20万人もの日本人が同様の苦難を経験していました。

■戦争に勝者、敗者は存在しない。あるのは”犠牲者”だけ。
戦争は、勝者や敗者ではなく、多くの犠牲者だけを生みます。特に地域住民の苦しみは深刻で、小さな子どもが飢えや病で命を落とす場面が繰り返されます。私の父も抑留中に感染症で命を落としました。この現実は、戦争がもたらす悲惨さを今も世界各地で示しています。
だからこそ、私たち一人一人が戦争の悲惨さと平和の尊さについて考える必要があります。子どもたちに、今の平和が決して当たり前ではないことを知り、誰に対しても思いやりと絆を持ちながら平和を守り貫いてほしいと願っています。

■あいさつから平和は始まる
戦後80年の節目をきっかけに、二度と戦争を繰り返さないために何ができるかを真剣に考えるべきです。私は平和のために大切なのは「あいさつ」だと思います。誠実なあいさつは人間関係を深め、信頼を築く基盤となります。それは個々の人間における平和の始まりであり、社会全体に広がる平和の基盤へとつながるものです。私たちの日常生活で心を込めたあいさつを続けていくことが、より平和な世界をつくる第一歩になると信じています。お互いに平和のあいさつを交わしましょう。

問合せ:人権啓発課
【電話】43-1199