- 発行日 :
- 自治体名 : 熊本県菊池市
- 広報紙名 : 広報きくち 令和7年4月号
■障がい者支援施設 サニーサイド
菊池市泗水町南田島1791-1【電話】0968-38-4448
施設長 宮﨑嗣大(みやざきつぐひろ)さん
◇障がいに対するイメージを変えたい
16年前からアート活動をしています。既存の文化芸術にとらわれない自由な発想で創作する「アール・ブリュット」(生の芸術)を知り、利用者の絵がアール・ブリュット展に選ばれたことがきっかけで、少しずつ活動が盛り上がっていきました。
障がいのある人がメディアに取り上げられ、評価されていることに衝撃を受けました。利用者の中には社会で苦い経験をして入所している人もいます。絵を描くことで社会に認めてもらえるという気付きの機会になりました。
アート活動を始めてからは利用者の心が穏やかになりました。強気な性格が絵を描くことで余裕が生まれ、利用者間のトラブルが減りました。内気で恥ずかしがり屋だった利用者は、絵を描き始めてから自己表現をするようになりました。
サニーサイドでは通年ギャラリーで絵の展示をしたり、秋まつりなどの地域交流イベントを開催したりしています。実際に関わる場所を増やすことで、障がいに対する理解を深め、イメージを変えることができると考えています。
障がいと一言でいっても、いろいろなパターンがあります。一人一人の強みを生かし、その人らしく人生を歩んでいくためにどう支援できるかをこれからも考えていきます。
■ボランティアグループ きくよう虹の会
菊池郡菊陽町久保田2596【電話】096-232-4824 ※菊陽町福祉支援センター内
代表 川端(かわばた)フジノさん
◇障がいは一人一人の個性であり特性
民生委員・児童委員として活動をする中で、障がいのある子どもたちやその親と接する機会がありました。話を聞いていくうちに「障がいのある人の自立を支援したい、正しい理解を広めたい」という思いに駆られ、約30年前に「きくよう虹の会」を立ち上げました。
月に2回、障がいのある人とその家族、ボランティアの皆さんで和太鼓の練習やレクリエーションを行い、町内外のイベントで練習の成果を披露しています。演奏後には、地域の皆さんに声を掛けられることもあり、みんなとてもうれしそうです。
今では太鼓が叩きたくて待ち切れずに準備を始めるメンバーもいます。そんな彼らの笑顔が私にとっても活動の原動力になっています。
活動を通じて、障がいへの正しい理解が広まれば、地域でのつながりもできると思っています。「障がい者」ではなく、人の見た目がみんな違うように、障がいも個性であり特性です。ボランティアの皆さんも壁をつくることなく、対等な関係を築いています。
「虹の会」という名前にはそれぞれの色(個性)を持つ人が一つになれば、虹のように光り輝くという意味があります。これからも活動を通じて、誰もが認め合う社会をつくるお手伝いをしたいですね。
■株式会社ハッピーブレイン
合志市御代志1661-1ルーロ合志303号【電話】096-344-0007
代表取締役 池田竜太(いけだりゅうた)さん
◇ごちゃまぜの世界をつくりたい
eスポーツを通じたサポート事業を障がい者や高齢者向けに行っています。毎月のオンラインイベントの他、年に数回会場を設けてeスポーツ大会を開催し、参加者は全国から集まっています。
以前は理学療法士として16年間リハビリの仕事をしていました。患者さんと向き合う中で、退院しても閉じこもる人が多いことに気付き、障がいがある人が社会参加できるものはないかと模索していました。
そんな時、eスポーツに出合って「これだ」と思い、仲間たちと一緒にハッピーブレインを立ち上げました。同じ土俵で勝負をするので、誰もが対等にコミュニケーションが取れることが強みです。
重度の障がいがある子どもを持つ両親から「けんかや仲直りをする機会など、学校に行かないと経験できないことをeスポーツで体験できて良かった」と言われた時は、すごくうれしかったです。
eスポーツはさまざまな特性を持つ人とつながることができる新しい可能性を秘めています。人と人との交流を通じて、自分のさらなる可能性を見出してもらいたいと考えています。
障がいの有無に関わらず「ごちゃまぜの世界をつくる」。そこにたどり着くために、これからも進み続けます。
■踏み出すことで、世界は変わる
(株)CREIT 代表 高橋尚子(たかはししょうこ)さん
17歳で交通事故に遭い、手足の自由を失った高橋さん。辛い経験をしながらも、社会的な障壁を除くための情報発信を続けています。大切にしているのは「心のバリアフリー」でした。
交通事故後、5年くらいは心が前向きになれない時期が続きました。「生きる意味ってあるのかなって」。そのモヤモヤを打破してくれたのが、ある美容師さんとの出会いでした。美容室は2階にあったのに、車いすごと私を持ち上げて店まで運んでくれて。本当にうれしかったことを覚えています。
このことがきっかけで、私と同じような境遇の人がもっと外の世界に目を向けてほしいと思うようになりました。現在は各種SNSで自身の経験やバリアフリーの重要性を発信しています。
近年は合理的配慮が義務化されるなど、少しずつ法律の整備は進んでいますが、実際はあまり変化を感じないのが現実です。だからこそ、お互いが相手を思いやり、理解しようとする「心のバリアフリー」を広げていく必要があります。
うまくサポートしたいと思うあまり、声を掛けられず無関心を装ったり、過剰に手伝ったりすることもあるかもしれません。でも声を掛けることで救われる人がいます。心掛け一つでバリアは乗り越えられると思うんです。
障がいの「ある」「ない」に関わらず、手を差し伸べる。そんな社会になってほしい。勇気を持って一歩を踏み出すことで、階段も段差も、どんなバリアも、きっとなくすことができると私は信じています。