- 発行日 :
- 自治体名 : 熊本県宇城市
- 広報紙名 : 広報うき ウキカラ 令和7年4月号
■季節や素材で変わる表情にワクワクが止まらない
◆熊谷 美治 Kumagai Miharu
昭和52年三重県生まれ。豊野町在住。自宅の周りにある植物や野菜の皮などを使用して草木染をした糸で編み物などを制作。市内外で、定期的に展示会を開催している。また、市が行う公民館講座やカフェでのワークショップなどを通じて、使う物や煮出し方によって色味が変わる草木染の奥深さや手仕事の楽しさを伝えている。
◇手仕事に魅了され
ワクワクした表情を浮かべながら庭の植物を採っているのは、熊谷美治(くまがいみはる)さん。植物などを細かく刻み、煮出して作る染液で糸などを染める草木染を始めて約16年。趣味で始めたものの、今では展示会を開いたり、講師を務めたりするほどになった。
熊谷さんは生け花をしていた祖母の影響で小学生の頃に生け花や編み物などを始め、手仕事のとりこに。東京の花屋で働くため21歳で上京した後も、リースを作ったり、自分の子どもの靴下などを草木染で染めたりと手仕事に励んだ。
14年前、東日本大震災を機に自然豊かな豊野町に移住。同じタイミングで東京から移住した手仕事仲間とマルシェを開催することになり、本格的に草木染を開始した。
◇奥深い草木染の技法
草木染は植物の種類によって色味が変わることはもちろん、染液を作る工程での煮出す回数や染めるものの素材やその重さ、色を定着させるために使うアルミや銅などの媒染(ばいせん)の組み合わせなどによっても色味が変わる。
「同じ植物を使っても同じ色にはならず、染めるときはどんな色になるだろう、と毎回ワクワクしています。自分好みの色が出たとこきが一番うれしいです。」と笑みがぼれる。
また、自宅の周りで育つ植物は季節によって変わるため、新たな植物を見つけては試しているという。「料理で出たタマネギなどの野菜の皮やドリップ後のコーヒーの粉、草取り後の草などはもったいないので捨てずに取っています。」と生活の中で出た物も無駄にしない。生活の中にある物で取り組むことができて、環境に優しいことも草木染の魅力の一つだ。
◇夢中になれるもの
熊谷さんは、美里町や大津町などでも講座やワークショップを開催している。参加者からは「とてもきれいな色が出て感動した。」や「丁寧に教えてくれて分かりやすかった。」などの声が聞かれる。草木染は誰でも簡単に制作することができて挑戦しやすい上に、熊谷さんの柔らかな雰囲気と丁寧な講義で人気を集めている。
「皆さん夢中で作業されて、出来上がった物をうれしそうに見られます。その姿を見ると、講座を開いて良かったと感じます。」と熊谷さん。
長く草木染をしていてもいまだに新しい発見があり、はまるとやめられないという。「草木染は奥が深くていつまでも私を夢中にさせてくれるものです。」と草木染への思いがあふれる。
草木染は環境にも配慮した技法として知られることから、SDGsの取り組みにも寄与している。千変万化(せんぺんばんか)で持続可能な草木染。熊谷さんのワクワクはこれからも止まらない。