- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県出水市
- 広報紙名 : 広報いずみ 9月号(2025年9月1日発行)
AM 6:00。
高校時代まで走っていた
慣れ親しんだ道を、
当時と同じように走り始める。
パリ五輪でのレースから約1年が経った
7月下旬。
一山麻緒選手の姿は故郷出水市にありました。
運動会のかけっこで一番を取りたくて
小学5年生の時に始めた陸上。
高校時代までは無名のランナー。
「マラソンで五輪に出たい」
その夢を叶えるべく進んだ実業団の道。
結果が全ての世界。
強くなること、
早く走ることだけを考え続ける日々。
周りのトップアスリートたちから、
“天性の負けず嫌い”と
一目をおかれた一山選手は、
瞬く間に日本を代表する選手に昇りつめました。
そして掴んだ五輪出場。
自身の夢を叶えるだけでなく、
その力強い走りで、
私たち出水市民、そして全国の人達を
何度も魅了してくれました。
市は、2大会連続で五輪出場を成し遂げた
その偉業・功績を称え、一山選手へ
出水市で最高の賞をお贈りします。
あなたは、出水市の誇りです一
■涙と笑顔の市民栄誉賞授与式
◇史上2人目の出水市市民栄誉賞
7月23日、マルマエホール出水にて2大会連続で五輪出場という輝かしい功績を成し遂げられた一山麻緒選手[資生堂ランニングクラブ所属]へ市民栄誉賞をお贈りしました。今回お贈りした市民栄誉賞は、スポーツ等の各分野で世界的な功績を収められ、市民の方々へ希望や勇気、そして感動を与える活躍をされた方へ贈る賞です。これまで、元プロ野球選手の外木場義郎様が受賞しており、一山選手は史上2人目の受賞となります。受賞のお祝いに駆けつけた市内の陸上団体や市民など約700名で埋め尽くされた会場を、母校・出水中学校陸上部の生徒の先導で進む一山選手は、「おめでとう!」の祝福の声に包まれながら登壇されました。その後行われた市民栄誉賞の授与。一山選手の目には、涙が浮かんでいました。「故郷の皆さんからの応援、温かさを肌で感じることができ、心が熱くなりこみ上げてきました」と涙の理由を語りました。式の後半では、来場者からの質問コーナーや、一山選手が通っていた鹿島こども園の園児から手作り金メダルがプレゼントされるなど、故郷の方々との交流を楽しまれました。一山選手の涙と笑顔が場内を温かく包みこんだ授与式は、多くの祝福と盛大な拍手の中、幕を閉じました。
■Message-メッセージ –
授与式から数日後、
一山選手から一通の手紙をお預かりました。
出水を出発する前夜に書かれたそうです。
市民の皆さんへの想いが綴られています。
ぜひ、ご一読ください。
※詳細は本紙をご参照ください。
■最高の走り
東京五輪で8位入賞を果たした後、
パリ五輪という新たな目標へ走り出しました。
しかしそれは同時に、
自身で掲げた
選手として最後の目標でもありました。
2024年8月11日 パリ五輪51位。
一山選手は、葛藤していました。
頭に浮かぶ『引退』の二文字。
しかし、その葛藤は
ある人の言葉で一気に晴れました。
「最後にもう一回走ってみたら。
今辞めたら不完全燃焼のまま終わってしまう」
夫・鈴木健吾さんから背中を押され、
2025年1月、現役続行を決意。
「正直これまでに何度も引退を考えてきました。
しかし、最後は『陸上が大好き』と心の底から
言える状態で選手人生を終えたいと思っています」
一山選手は新たな目標に向かって
走り始めました。
「約10年間、五輪を目標に
体の限界ギリギリで過ごしてきました。
今は五輪の重圧から解放され、
純粋に走ることを楽しんでいます。
今の目標はマラソンで自己ベストを出すことです。
誰かのためでもなく、
メダルのためでもない。
自分の最高の走りを見せたい。
その気持ちを胸に、これからも走り続けます」