- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県指宿市
- 広報紙名 : 広報いぶすき 2025年3月号
「ポリファーマシー」という言葉をご存知ですか。服用する薬剤の種類が増え、飲み合わせが悪い薬や同じ成分の薬剤を重複して服用してしまうことにより、副作用などの有害事象を起こす状態のことを指します。
高齢になると、高血圧症などの慢性疾患だけでなく、睡眠障害・便秘症などの加齢変化に対する治療の機会が増加し、服用する薬剤の数が多くなる傾向にあります。多剤服用が悪いわけではありませんが、診療科が異なることによる複数の薬剤の処方、用法・用量が守られているか否かなどのさまざまな要因によって予測不可能な有害事象が起こることもあります。複数の疾患を有していると病状の安定に薬剤は欠かせませんが、必要な量を内服していたとしても薬剤の増加に伴い、有害事象が出現しやすくなる場合もあります。
多剤服用とは6種類以上とされることが多く、5剤以上の服用で転倒リスクが高くなるという報告もあります。ポリファーマシーによるふらつきや食欲低下、認知機能低下の症状が転倒・骨折などの事故につながることがあります。
健康食品やサプリメントにも気を付けなければなりません。サプリメントは「食品」の区分に位置付けられていますが、複数あるいは大量の摂取や薬剤との併用で健康被害を来すこともあるため、服用している場合には必ず医師や薬剤師に伝える必要があります。
昔から服用している薬剤であっても他の薬剤の数が増えていくにつれて有害事象が出現しやすくなる場合もあります。だからといって、自己判断で服用を中止することや飲み忘れのために過剰に服用することは、かえって不調を来す可能性があります。用法・用量を守ることが重要であることから、かかりつけ医に相談して服用する数や時間などを個々の生活状況に合わせて見直すことも大事な工夫になります。
ポリファーマシーを防ぐためにはかかりつけ医だけでなく「かかりつけ薬局」を持ち、薬剤の見直し・相談ができる機会をつくっていくことも大切です。
今月のドクター:指宿医師会 牧角 倫之介(まきすみりんのすけ)
問合せ:指宿医師会
【電話】34-2820