文化 薩摩スチューデント渡欧160周年記念「れいめいの風」

■黎明の地「羽島」
皆さんは、鹿児島中央駅東口広場に建つ「若き薩摩の群像」という19人の銅像をご存じでしょうか。薩摩スチューデントと呼ばれた彼らは、今から160年前、羽島浦から英国へ密航留学した若き薩摩藩士たちです。
当時の日本は鎖国中であったため、幕府の許可なく海外に行くことは禁じられていました。そのため、藩主から偽りの名前を授かり、幕府の目を掻い潜っての出航でした。旅立ちの地、羽島に着くと、潜伏しながら船を待つことになります。羽島到着から2カ月後の4月17日。英国行きの蒸気船が現れます。未知なる世界に対する不安や希望、葛藤など様々な思いを抱いた彼らは、旅立ちの際の心情をそれぞれ和歌に残しました。
西洋社会で見聞を広めた彼らは、帰国後は外交や教育、経済などあらゆる分野で活躍します。大阪を拠点に経済界に大きく貢献した五代友厚や初代文部大臣の森有礼、最年少の13歳で留学に参加し、後に米国でワイン王と呼ばれた長沢鼎など。
新しい時代を切り開くために、進取の気性を持って英国留学を果たし、帰国後は日本近代化の礎を築いた彼らが旅立った羽島は、まさに「黎明の地」と言えます。

薩摩藩英国留学生記念館スタッフ 下迫田樹一
参考文献:薩摩藩英国留学生(犬塚孝明 著)

■開館10周年記念特別企画展
「long long journey 旅はまだ、続いている。長沢鼎展」開催中

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