くらし 令和7年度 町政執行方針(2)

■活力を生むまちづくり
○農業
平取町の主要作物であるトマトをはじめ施設野菜の栽培は、昨今の地球温暖化の影響や資材物価等の高騰により、厳しい状況に直面するなか、令和6年度の販売額がトマトは41億円、キュウリは過去最高の3億円を超えています。全国屈指の産地を背景に「びらとりトマト」のブランドは確実に定着しています。
しかし、生産農家の高齢化や離農、働き手の確保ができないなどの理由により、作付面積は減少しています。後継者や新たな担い手、労働力を確保することは重要です。次の世代を担う人材の育成に取り組み、支援制度の拡充等を検討するとともに、人手不足の解消と農作物の品質向上を図るため、スマート農業を推進していきます。
「びらとり和牛」は、飼料、資材などの生産経費は高止まりが続き、和牛生産にかかる需給動向による消費も低迷し、畜産農家の経営は、今なお厳しい状況が続いています。先人が築いてきた「びらとり和牛」のブランドを継承するためにも、厳しい時期を乗り超える持続可能な生産体制づくりに向け、畜産公社や関係農家、農協、関係団体と様々な視点で検討を進めていきます。
酪農・養豚・軽種馬等の畜産振興についても生産者、関係団体との協議連携を基本に支援を継続していきます。
また、国の畑地化促進事業による水田の畑地化が急速に進むなか、町内各地域の農業将来像となる「地域計画」が策定されました。今後は計画を基本とした畑地化後の農地の有効活用に向けた流動化や農業施設の効率的な維持管理など、各地域の農業課題等について十分に協議を重ね、対応していきます。

○林業
森林の有する多面的機能を発揮させるため、適切な森林管理を進め、町有林の循環型経営を確立した事業量の安定化、森林施業の基盤である林道の開設や適切な維持管理を継続していきます。
令和6年度から森林環境税が国税として課税され、森林環境維持のために必要な財源であることが理解されるよう、森林環境譲与税を活用した民有林の間伐推進、作業路の整備など安定した森林整備の推進、人と木や森との関わりを考え、豊かな心を育む「木育」の推進、公共施設などの木質化による木材利用の促進を継続的に進めていきます。
林業現場においても担い手不足や作業従事者の高齢化率が高いことから、林業担い手対策事業を継続し、人材確保の取り組みを強化していきます。
また、木質バイオマスの活用を進めるため、地域内の林地残材や未利用材の活用による原料供給体制を進め、地域内経済循環型システムのさらなる構築を目指します。

○商工業
人口減少、時代の趨勢や消費者の価値観の変化などから、平取町での小売店や飲食店の経営は厳しい現状です。
継続可能な経営を支援するため、後継者対策として事業承継支援制度の創設や小規模事業者の借入れに対する新たな利子補給制度を設け、町内での起業環境の整備や地域の素材を活用した新たな商品開発なども、商工会等と連携し積極的に進めていきます。

○観光
観光がもたらす地域への経済効果、雇用の創出やアイヌ文化の振興、定住促進などを期待し、観光関連事業を進めます。
平取町ならではのアイヌ文化体験などによるアドベンチャーツーリズム、すずらん群生地をはじめとした観光資源への積極的な誘客、新たな観光資源の掘り起こしを観光協会やアイヌ文化振興公社などと連携し推進します。
また、昨年6月「日高山脈襟裳十勝国立公園」が誕生したことから、日高山脈の秀峰 幌尻岳を有し、公園エリアにアイヌ語地名や伝説などが数多く残る平取町として、国立公園化というブランドを活用し、さらに来訪者や登山客の誘致を図ります。
ふるさと納税は、平取町の魅力向上と新たな商品開発や特産品のPRと販路拡大のため、体制を拡充し、さらなる自主財源の確保を強化します。

■快適に暮らせるまちづくり
○生活基盤
道路、橋梁、河川、水道、生活雑排水施設などのインフラは、老朽化が顕著になっています。整備の緊急度、優先度を十分考慮しながら、事業コストの低減となる工法も検討し、適切な施設整備、維持管理を目指します。
国・道が管理する道路や河川などの整備は、国道237号線をはじめ町内に多くの整備箇所があることから、引き続き関係機関に早期整備を強く要請します。
移動手段の確保は、路線バス、デマンドバス、福祉バスなどそれぞれの役割をもって運行されていますが、運転士等の人材確保が厳しい現状を踏まえ、より効率的な地域内での交通手段の在り方を検討します。

○防災・消防・救急
気候変動を要因とする大雨や大規模地震等の自然災害に対応できる防災体制のさらなる強化が大きな課題です。特に当町で発生する可能性が高い大雨洪水には、沙流川平取地区水害タイムラインに則った行動を効果的に実行するため、町民の防災意識の高揚を目指し、各地域での防災訓練も実施していきます。
消防は、さらなる資機材の充実強化、消防団との綿密な連携に努め、有事の際の適切な対応を図るとともに、救急体制は関係機関との連携を強化し、救急隊員のスキルアップを図り、救命率の向上に努めます。

○住環境
町内での暮らしや雇用の確保には、住環境の整備が必須の条件となることから、「平取町住生活基本計画」により、公営住宅の整備、住宅の配置適正化の検討を進めます。
民間の賃貸住宅の増設を進めるための支援制度の継続、空き家バンクの充実、空き家の活用など住宅数の確保を図るとともに、良好な景観の形成や倒壊による事故防止からも廃屋等の撤去を進めていきます。

○環境・景観・エネルギー
「平取町ゼロカーボン推進計画」に沿って、木質をはじめ可能性のあるバイオマスの活用、脱炭素化に向けた取り組みを進めていきます。びらとり温泉での木質燃料ボイラーの導入についても実現を目指します。
アイヌ文化や農林業を育む自然豊かな平取町らしい景観を将来に継承するため、重要文化的景観の4次選定に向け取り組みを強化し、町内での建設ニーズが高い太陽光発電施設の整備に関わるガイドラインなども見直し、景観の保全対策を強化していきます。