くらし 掘り下げ隊が行く
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- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道鹿追町
- 広報紙名 : 広報しかおい 令和7年7月号
◆時間が磨いた黒い宝石「鹿追キャビア」誕生!
・いよいよ鹿追町産キャビアの商品化が始まると聞きました。まずは今回の商品化に至るまでの経緯を教えてください
平成26年からチョウザメの養殖を始め、今年で11年目を迎えました。
これまで、チョウザメ魚肉の出荷のみを行っていましたが、令和4年頃から年間1〜2尾の魚から卵が採取できるようになり、キャビアの試作を行っていました。昨年は賞味期限の設定やパッケージを作製するなどキャビアの商品化に向けて準備を進め、今年から販売を始める運びとなりました。
・そもそも、なぜチョウザメの養殖に取り組むことになったのでしょうか
チョウザメの養殖施設のある環境保全センターでは、乳牛ふん尿などからバイオガスを発生させ、ガス発電機によって電気と熱を生産しています。この熱を利用して付加価値の高いものを作り出したいとの考えから、高級品である「キャビア」が採れるチョウザメ養殖に取り組むことになりました。
・なるほど、バイオガスがきっかけだったんですね。まさか、牛のふん尿がキャビアにまでつながるとは…ちょっと驚きです
元々、発電機から発生した熱はバイオガスを発生させるための加温に使われていましたが、熱の余剰分は外に放出していました。この余剰熱を何かに利用できないかということで、チョウザメ養殖などに活用されることになりました。余剰熱は熱交換器を通して温水として蓄熱槽というタンクに貯蔵し利用しています。
・電気も熱も余すところなく活用して、しかも高級食材まで生み出しているとは……まさに一石三鳥ですね!
そうですね(笑) 養殖を始めた頃は約300尾だったチョウザメも、今では約5000尾にまで増えましたよ。
・それはすごいですね。着実に成果を積み重ねてきたことが伝わってきます。とはいえ、キャビアの商品化まで11年。やはり時間と根気のいる取り組みだったのでは?
養殖を始める前の情報では、生後8年くらいで卵が採れるとのことでしたが、実際には年数だけではなく、さまざまな条件を整えないとチョウザメが卵を持たないことがわかりました。そうした試行錯誤を重ねていくうちに、徐々に卵が採れるようになっていったんです。
また、卵がキャビア加工に適した時期を見極めるのにも経験が必要です。定期的に粒の大きさや柔らかさを確認しながら、最適なタイミングを判断しています。
・卵を採るまでに、そこまで細やかな調整が必要なのですね。具体的にはどんな工夫や技術的な取り組みをされてきたのでしょうか
代表的なものを挙げるとすれば、水温管理と給餌方法ですね。チョウザメが卵を持つためには5℃以下の低水温になる期間を作る必要があります。そのため、季節に応じて水温が適切になるよう環境を整えています。
給餌方法では、最初に餌を多めに与えて魚体を肥えさせ、その後あえて餌の量を減らします。そうすることで卵巣に栄養がいき、卵が成長していきます。チョウザメが肥えたままだと卵ができないのが不思議なところです。
・そこまで手間暇かけて育てられたキャビア、食べるときにも気合いが入りそうです!そんな「鹿追キャビア」のおすすめの食べ方があればぜひ教えてください
表面を軽く焼いたトーストにキャビアをのせるのがおすすめです!クラッカーにのせるより、キャビアの食感を損なわず、風味もより引き立ちます。カルパッチョの上に散らして食べるのもおいしいですよ。
・どれも一度、試してみたいです!ところで、5月に町民限定で先行販売されましたね。反響はいかがでしたか?
養殖を始めてから、町民の皆さまを長い間お待たせしてしまいました。キャビアの商品化にあたり、まずは11年の成果を地元の皆さまに味わっていただきたいという思いから、先行販売を行いました。申し込まれた方やすでにご購入いただいた方からは、「キャビアを食べたことがないから楽しみだ」、「輸入キャビアとは違う。想像していたより美味しかった」といった、うれしい感想をいただいています。
・7月からは一般販売、そしてふるさと納税の返礼品にも活用するそうですね
町民の皆さまをはじめ、町外の方にも、鹿追の新たな特産品として、食していただけるよう町内での販売やふるさと納税を活用していく予定です。鹿追キャビアはまだ生産量が少なく限られた数しか出荷できませんが、鹿追キャビアをPRしながら生産量を増やし販路を拡大していきたいです。
・最後に、これからキャビアを手に取る方々へメッセージをお願いします
「いつか必ずキャビアを」という想いを胸に、11年間大切に育てたチョウザメから生まれたキャビアです。まだ駆け出しの完成度ではありますが、ぜひ味わっていただき、今後も「鹿追キャビア」を応援していただければ幸いです。
●鹿追キャビアの特徴
卵本来のねっとりとした柔らかさ
濃厚な味わい
食べやすい塩分濃度
*北海道ホテルの総料理長が監修
鹿追キャビアに関する問い合わせ:商工観光課 商工労政係
【電話】66・4034