- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道鹿追町
- 広報紙名 : 広報しかおい 令和7年8月号
◆ツーリズムの新しいかたち
(正保)ワーケーション事業「シカソン」でも鹿追の地域課題に取り組んでいます。
(金森)シカソンは具体的にはどのような取組なのでしょうか?
(正保)シカソンは、鹿追の短期滞在者向けのプログラムです。訪問者と、環境をテーマに、一緒にマラソンを走るかのように学び、考え、持続可能な未来を目指す内容です。企業の方向けのプログラムでは、場所を変えて働くワーケーションからさらに踏み込んで、鹿追の人たちと交流し、鹿追の地域課題について共に考えます。鹿追は、ジオパークの活動があり、大雪山国立公園でもある素晴らしい自然があり、先進的な気候変動対策の取組もあります。企業にとっては人材育成や、事業のヒント、連携のきっかけづくりとなる取組です。
(シンボ)IBのような、大人の探究学習と言えるでしょうか?
(正保)結果的に、探究学習となこともあるかも知れません。私はもっとシンプルに、鹿追を訪ねてくれる人に、鹿追のことを知ってほしいと思って取り組んでいます。知らない町のことには関心を持たないし、産品を買おうとも思わないし、住もうとも思わないですよね。さまざまな目的で鹿追を訪ねてきてくれる交流人口を増やし、さらには移住につながることを目指しています。
(金森)シカソンには、ジオパークも協力しています。
(正保)プログラムの最初に、ジオパークビジターセンターの見学・解説を入れることが多いです。環境をテーマにするときにぴったりな展示があり、その後に訪問する施設や体験することがつながります。スタッフやジオパークガイドの解説が素晴らしいですし、交も楽しみです。
(金森)ジオパークでは、地域について学び発信するジオパークガイドの養成に取り組んできました。訪問者にとって地元の人と話をするのはうれしいですよね。シカソンの参加者からどのような反応がありますか?
(正保)実際に見学したり体験したり意見交換をしたり、知識でしかなかったことを実感として落とし込めることが好評です。例えば、然別湖には原始のままを感じられる自然がある一方で、特定外来生物のウチダザリガニが大繁殖し、少なミヤベイワナを含む生態系に影響がでています。ウチダザリガニの駆除体験をプログラムに入れることもありますが、とてもリアリティがあります。基幹産業の農業が、家畜ふん尿由来のバイオガス発電や水素で走る燃料電池車の活用と結びついていることも伝わります。それは広大な農地の景色と、プラント見学の力です。金森さんは、山岳地の永久凍土や全面結氷する然別湖が、温暖化の影響を受けるかも知れない、という解説をよくしていますね。バイオガス発電などの町をあげての気候変動対策は、大切な自然を遺していくことにもつながります。きっと、美しい自然や、雄大な景色に意味が宿っていくのでしょうね。シカソンのあと、リピーターとして家族旅行で鹿追に来てくださる方がいたり、シカソンに毎年参加してくれる企業も出てきました。
(金森)ミヤベイワナの話など、ジオパーク活動でも積極的に取り上げてきた話題がでてきてうれしいです。お話ししながら、シカソンは、とかち鹿追ジオパークならではのツーリズムを実現している実例だと思いました。
◆交流から生まれる未来
(金森)ジオパークの活動やシカソンでは、訪問者と地域の人が交流する機会をつくってきましたが、IBもまた、訪問者と地域の交流につながらないでしょうか。昨年開催した気候変動のセミナーでは、お招きした講師から、温暖化対策と社会変革の話題の中で、IBはまさに社会変革を進めるための教育だという話がありました。そして、鹿追のIB教育導入に注目していました。
(シンボ)IBは、答えのない問いに向き合う、これからの世界に必要な教育です。気候変動対策も、決まった答えがないけれど、答えをだしていかなければならない分野ですね。IBの地方公立中学校での導入は先進的なので、今後、全国の教育関係者の訪問も増えるせん。また、鹿追に赴任してきた先生と地域の人の交流も増えていくと思います。これまでも鹿追町は、英語教育や環境教育に小中高一貫で取り組み、先生たちも鹿追で新しいことに挑戦してきました。IBでは中学3年時にコミュニティプロジェクトとして地域課題に取り組みますので、地域と一層深く交流していくことになると思います。
(正保)シカソンでは「シカソンサミット」と題して、年に一度、全国各地からの参加者と鹿追のキーパーソンが交流するプログラムを開催しています。IBに挑戦する先生や、シンボさんはじめIBのコーディネーターも、交流の輪に加わってくれたら面白そうです。
(金森)とかち鹿追ジオパークの動は、第一に自然遺産を世代を越えて遺していきたいという思いと共にあるのですけれど、お話ししながら、人と人、学びと社会をつなげていく活動でもあると再認識しました。IBやシカソンといった新たな動きが、ジオパークの活動と重なり合ってくることが、認定以来12年間の成果なのだと思います。そして、互いに交わりながら、活動を発展させていきたいですね。お二人とも、ありがとうございました。
●ジオパークの再認定審査
ジオパークでは4年に一度、再認定の審査があります。前回審査時に確認した課題への対応状況や、活動の進展を確認し、次の4年間に取り組むべき課題について認定機関である日本ジオパーク委員会から提案を受けます。大きな課題がある場合は2年間の条件付き再認定となり、その後、対応状況によっては認定取消となることがあります。
●ワーケーションとシカソン
ワーケーションはワーク(仕事)とバケーション(余暇)を組み合わせた言葉で、普段の職場とは異なる場所での新しい働き方です。鹿追町では、シカソンと題して、滞在中に環境をテーマに学ぶワーケーションプログラムを提供してきました。
●国際バカロレア(IB)教育
国際的な教育プログラムで、日本でも文部科学省が推進を表明しています。教科横断的な探究学習や、学びの意義を考える姿勢を重視します。日本ではインターナショナルスクールを中心に、260校が認定を受けています。