くらし 男女共同参画コラム

■連載171
▽仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝

今年の夏は格別暑さを感じます。稚内と名寄・旭川では、最高気温がかなり違います。
とは言え、あの長い冬を思い出すと、北海道の夏を満喫したいですね。
私事で恐縮ですが、過日、稚内で講演をさせていただきました。北海道銀行と取引先企業との会の名称は「ライラック会」です。拙著『組織をこわす人、乱す人、活かす人‐仕事は必ず誰かが見ている‐』を上梓した縁から、ライラック会稚内支部設立50周年事業の一環として、「一介の私学教員が想う人望とは何か」というテーマで、講演した次第です。今回は、あらためて私の独断と偏見に基づく「人望論」をお話させていただきます。これまで170回執筆させていただきましたので、重複の恐れもありますが、お許しください。
人望は持って生まれた性格や資質とは無関係であると、私は思います。意識して実践していくならば、人望は自然発生的に生まれてくるのではないでしょうか。「意識すれば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、結果が変わる」と、私は確信しています。私の記憶に間違いがなければ、1815年6月のワーテルローの戦いで、かのナポレオンを破ったイギリスのウェリントン将軍は、「習慣は第二の天性」(‶Habit issecond nature″)と呼びました。良い習慣を身につけて実践していくことは、極めて大切です。とりわけ人間関係における良い習慣こそが、人望への近道だと思うのですが。
それでは、人間関係における良い習慣とは如何なるものでしょうか。それを一言で言うならば、「人には丁寧に接すること」であると、私は考えます。誰にでも同じように、敬意を持って、礼儀正しく、言葉を選んで優しく対応することが、人望の源泉でしょう。これらは、意識すれば全て行動に移せる「スキル」と言っても過言ではありませんね。
IQ(知能指数)が高い勉強秀才型の人物が人望はあるとは限りません。自らシュミレーションをして、迅速に答えを導き出すことが出来るゆえに、相手との話を途中で遮って結論を一方的に伝えてしまうことが少なからずあるでしょう。これは「話を聞いてくれない」こととほぼ同じです。迎合する必要はないけれども、人の話は最後まで耳を傾けるならば、心理的安全性の面からも人が寄るでしょう。傾聴力も人望に繋がります。また、発した言葉と投げた石は戻ってこない。暴言や失言ほど恐ろしいものはありません。食言は信用失墜。言葉を慎重に選んで、相手を傷つけないように細心の注意を払うことが肝要。
私の恥多き教員生活に照らすならば、とかく日本人は評価以前に評判が先行するような気がします。「人望の有無が評判を決める」と言えるのではないでしょうか。また、人はついつい、他者同士を比較して品定めすることを好みます。たとえば、挨拶の仕方などが典型的な比較基準になります。A氏は誰にでも笑顔で腰が低く、挨拶も行き届いている。他方、B氏は愛想も無く、単に黙礼だけである。心ばかりの品を贈ったとき、X氏は丁重なお礼を電話や手紙で述べる。他方、Y氏は音沙汰無し。評判の良し悪しは一目瞭然。
謙虚さと誠実さを忘れることなく、誰にでも丁寧に接していくことを自然体で実践していくことは、意外にも「言うは易し、行いは難し」か。ですが、「意志あれば道あり」では。

▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。